×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
なんとなく意地悪したくなっちゃう、っていうタイプの子ってたまーにいて。

そうそう、特にこの目の前でしかめっ面で、牛丼の上に生卵割ろうとしてるこいつとか。
もっと卵なんて気合い入れずに普通に割れるだろ、と思うんだけれど、本人は殻のかけらが入るのが嫌だからって、ものすごい真剣な顔で割る場所を見極めて、真っ二つに割ろうとしていて。
意地悪して、割る瞬間に「あ!箸落とした!」なんて大きな声をわざと出したらさぁ大変。「カカシ先輩のせいで生卵が変な風に割れた!」ってオレを半泣きで責める責める。その顔の面白いこと。
声を出して笑うともうめちゃくちゃに怒るから、マスクの下でこっそり笑って「はいはい悪うござんした」とオレのまだ箸をつけてない、カナのよりもランクのいい特上牛丼と交換してやる。
ついでに店員さんに追加の卵トッピングをお願いすると、仕方ねぇな、自分のよりいい牛丼だから許してやるよ、みたいな、半分ラッキーと思っているのを隠しつつ、ふてくされた顔しながら食べ始める。

それで今度はきちんと生卵を綺麗に割って食べ始めるのだけれど、自分の頼んだものよりもいいものと交換してもらった手前、罪悪感が湧いてきて。
半分くらい食べたとこで、「先輩、交換しちゃって良かったんですか」なんてしょんぼりし始める。
「別にいいよ、数百円だから」って、笑って言うんだけど、カナは気にするのかどんどん大人しくなる。その数百円であの面白い顔が観れると思ったら安いもんだ。

それでまたオレはつまらなくなって、「オレとくると毎回牛丼で飽きない?」ってまた意地悪を始めると、「牛丼の悪口を言わないでください!」なんてぷんすか怒り始める。
もうちょっとかわいいもの食べなよ、と諭すと「食べ物にかわいいもかわいくないもありません!」とすっかりシャットアウトされてしまった。
それじゃあ今度は、「随分一途なんだね」と言ってみせると、急にむせて顔を真っ赤にする。

本当は「オレは知ってるよ、ずっとオレのこと好きなんでしょ」って言いたかったけれど、オレは意地悪だからカナから好きだって言ってもらいたくてしょうがない。
牛丼なんか、オレが連れてくるまで食べたことなかったって言ってたじゃない。そんなに好きだったわけじゃないでしょ、最初から。
オレがここの牛丼うまいよ、って言ったから、オレの好物だと思って合わせてくれてるんでしょ。まぁ本当のオレの好物はサンマだけど。

好物とか直接聞いたら、好きなのバレるのが恥ずかしいから聞けなくて、牛丼しか頼まないのもぜーんぶ知ってる。カナは全部顔に書いてあるから。

「何変なこと言ってるんですか!」
「何が変なの?牛丼に一途って言っただけだけど。あ、むせたご飯粒そこに飛んでるよ、もう」
「やだ!そんなの見ないでください!」
「うそうそ、冗談だよ」

ねぇ、カナはいつになったらオレのこと好きって言ってくれるのかなぁ。
それとも、意表をついてオレから好きって言ったほうが、面白いものが見れるのかな。

「ほら、くっちゃべってないでさっさと食わないとお前だけ置いてくぞ」
「あ、待ってください急いで食べますから!」
「急がなくてもいいよ別に」
「どっちなんですかー!もう!先輩の意地悪!」

でもまだ、こうやって先輩ヅラしてちょっかい出すのもいいかもしれないな。
振り回しすぎて嫌われない程度に。

(ちょっかい)

back