死姦+対物性愛

13.幸せな夢
 汚くて、臭くて、うるさくて、不快なにおい。
近親相姦を防ぐためなのだろうが親の匂いはとても気分が悪い。いや僕の場合は、全体的にそうなのだろうか……
生理的な嫌悪感。
ロマンからはかけ離れた、壮絶なキショクワルイという感覚。
 母も用事があるというし父も恐らくは仕事と飲み会で随分遅くなるだろうことを思いだしながら、落ち着くために冷蔵庫から出した水を飲む。

「なあにが運命だ、ダッサ! ダッサ!」

口をぬぐうと乱暴に蓋を閉めた。イライラと、気分の悪さが少しだけ和らいだので飾野のことを想った。
部屋に戻ると、PCを起動して、この頃はまだ、規制が少なくよく見ることが可能だったエベレストの谷についてを検索した。
そのコースには棒に刺さった長靴が一つかけられていて、
沢山の登山者が命を落としている。それも腐らずに綺麗なままで凍ってしまうのだ。
イケナイこととは知りながらもあの不潔な部屋とは段違いにどきどきした気持ちがおそってきた。

「これが、恋……か」

恋。僕がもしそのように、美しく眠ったとして、もしかしたら飾野が冷たい僕を見て美しい声で抱き締めてくれるだろうか。少しずつ溶けていく僕を惜しみながらも、動きもしない僕を丹念に愛するだろうか。

 眠っている僕に触れる飾野の優しさが僕はたまらなく好きだった。
どんな女の子と居るよりも、デートでも普通に愛し合うでもなくても、僕は飾野と居るとまるで、泉のなかで安らいで極上のマッサージを受けているような、清らかな天使のそばでありがたい祝福をされているような感じがする。
大概の生きている相手にならば、絶対に味わわないという特別な感覚だ。

本で読んだ、非性愛者や無性愛者の存在が頭をよぎった。
確かにそうであるかもと考えたことはある。修学旅行で、周りが隣の風呂に女装で混ざれないかとバカをやっているときも、僕はあまりに何も思うところがなかった。

生きている相手に友達、以上の関係に固執したいというのは、そう感じないことだったので、思えば飾野の、生気のない淀んだ瞳が特殊であることはいえた。




14:29



prev next

目次リスト

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -