きれいな人だねと由来手が言う。
「そうかもね」
とだけ答えた。俺はいかにも生きてるって感じのあのキラキラした感じは、苦手で昔からそうだった。
よく言えば人間味溢れる、悪く言えば鬱陶しい。
凍えて悟りきった自分へと、一般目線の頂点のような生ぬるい劣等感を植え付けようとされるような。
笑いなさい、相談しなさい、話なさい。
私たちは生きてるんだから。
(――で?)
「昨日の残りでいい?」と台所に行き、冷蔵庫のカレーをテーブルに出した。
はるさんはありがとう、と電子レンジに向かう。
「じゃ、友達と出掛けるから」
と背を向けていたら母さんが帰宅した。すれ違うように由来手を連れて外に出る。
空は晴れている。
「由来手、風邪引いたり、しない? 平気?」
急に心配になり由来手の顔を覗き込んだ。心が、そわそわする。
「大丈夫。僕は身体は丈夫なんだ」
由来手がくすりと笑って、俺の手を自分へと引き寄せる。
ひんやりした手。
人形みたいに、何を考えてるかわからない目。
今日のことだってそうだ。
由来手はなぜ、俺を受け入れようと、する?
わからない。わからない。
はるさんとはきっと違う。
確信的に違う理由だと思う。
「飾野、僕にできることあったら、頼ってくれてもいいんだよ?」
「ありがとう」
手を振り、道の途中で別れる。
由来手は俺のことを知ろうする変わり者。逃げない変わり者。知りたい。
確かにその日、由来手のことを、知りたいと思った。
(素質が、あるかもな――)
身近にネクロフィリアが、こんなに居たなんて。