「なぁ」
「なに?」
「なんでも、ない」
「へんなの」
まるで、喉が、カラカラと、乾くみたいだった。
ポケットにしのばせてきた睡眠薬の箱が、手の中でわずかにかさりと揺れる。
心臓が脈打つ。
もしかしたら小さい頃は、普通の愛がほしかったのかもしれない。
もしかしたら、今より昔は、生きていてもよかったのかもしれない。
もしかしたら――
睡眠薬を握りしめた手を冷静に捉えながら、何も悟られぬように彼から目を逸らす。
だって、だけど。
死んだうさぎはかわいかったんだ。
死んだ猫や犬も。
死んだ、人間も。
電池が切れてもまだ、そこに在るわけで。
それは、喋らない、動かない、いつもと違う一面には変わらないわけだ。
どくん、どくん。
胸が痛くなる。