この間観に行った試合から数週間後のことだった。
「お姉ちゃん…!青峰くんと連絡つかなくなっちゃって…お姉ちゃんのところに行ってないよね…っ」
と、さつきから電話があったのは今から二時間程前の話だ。今日は試合だと言っていたはず。数日前、自分がどんどん上手くなるのを感じて最近バスケが楽しくて仕方ないと笑顔を見せていた大輝に何があったというのか。
心配になった私は携帯と財布だけ握りしめ家を飛び出し大輝を探した。行きそうなところはどこだ、と考えを巡らせても私は大輝のことをあまり知らない。
しばらく無心で走り回っていると、見慣れたシルエットを見つけた。私の家の近くではあるものの、一度も来たことがない公園だった。ほら、私は大輝のことなんて何も知らないんだ。
「大輝」
声をかけてピッタリとくっついて隣に座った。
大輝は私をチラリと一瞥しただけで何も言わない。
「今日試合だったんでしょ?マッサージしてあげるから家に帰ろう」
「何も聞かないのか」
「何か聞いて欲しいならハッキリ言って」
「…別に」
「たくさん汗かいてるでしょ?お風呂に入らなきゃ。ご飯も食べて、マッサージしよう。ね」
さつきに「大輝見つかりました。とりあえず私の家に連れて帰ります」とメールを打って、大輝と手を繋いだ。
家に着くなり大輝は私のことを力一杯抱きしめた。今までも幼馴染とはいえ異常な距離感だったことは十分承知しているが、こんなことをされたのは初めてで戸惑ってしまった。大輝はそんな私の様子を感じ取ったのか「わりぃ」と言って体を離した。抱きしめ返さなかったことを少し後悔した。
「お風呂にする?ご飯食べる?」
「風呂…借りるわ」
試合中に何かあったのだろう。さつきに聞けば早いが、本人と話がしたかったのであえてさつきには聞かずに大輝を待った。十分ほどでシャワーの音は止み、下着姿の大輝が出て来た。惚れ惚れするような均整のとれた体だ。
「髪乾かしてあげるから、おいで」
無言のまま私の前に腰を下ろした大輝。なにも纏っていない背中は思っていたよりも大きい。そっと背中に手のひらを当てると怪訝そうに「なんだよ」って。聞きたいのはこっち、何があったのかちゃんと話してくれないとわからない。私はあなたのことが知りたい。
短い髪の毛をタオルで拭きながら大輝の言葉を待つ。
しばらく無言のままだったが、やがてポツリポツリとことの顛末を話してくれた。
「試合の途中で、相手チームが全員プレーをやめたんだ」
「何それ」
「俺が…強過ぎたから」
「強くなって何が悪いの?強くなりたかったからたくさん練習したんでしょ?」
「その結果が今日の試合だぜ、笑えるだろ」
「何も笑えない」
「は?」
「大輝は誰よりも練習して強くなったんでしょ?その相手の子たちは大輝よりも練習量が少ないから、大輝に歯が立たなかったんでしょ?それなのに強すぎる大輝のせいで試合にならない?何言ってんの」
どうして純粋に実力を伸ばそうとしていた大輝が、そんなことを言われなければならなかったのか。単純に疑問に思ってそう言ったのに、大輝にとっては予想外の言葉だったらしく「やっぱお前最高だわ」と振り返った大輝に再び抱きしめられた。
「さすがに裸の男の子の抱きつかれると恥ずかしいんだけど」
「まだ俺のこと男の子だとか思ってるわけ?」
「大輝は男の子でしょ、」
「ガキはこんなことしねぇ」
「んぅ!?」
突然ぶち当てられた唇。
キスと呼ぶには拙くて荒々しかった。
「なぁ、」
「…なに」
「お前だけは何があっても俺の味方でいてくれよ」
「そんなの当たり前でしょ」
今度は私が大輝にキスをした。
唇ではなく額に。
「ご飯用意するから待っててね」
そう言って頭を撫でると「だからガキじゃねぇんだって」と頬を赤く染めた大輝。公園で見つけた時の危うさは消えており、いつも通りの穏やかな空気が部屋中に溢れていた。
「お姉ちゃん…!青峰くんと連絡つかなくなっちゃって…お姉ちゃんのところに行ってないよね…っ」
と、さつきから電話があったのは今から二時間程前の話だ。今日は試合だと言っていたはず。数日前、自分がどんどん上手くなるのを感じて最近バスケが楽しくて仕方ないと笑顔を見せていた大輝に何があったというのか。
心配になった私は携帯と財布だけ握りしめ家を飛び出し大輝を探した。行きそうなところはどこだ、と考えを巡らせても私は大輝のことをあまり知らない。
しばらく無心で走り回っていると、見慣れたシルエットを見つけた。私の家の近くではあるものの、一度も来たことがない公園だった。ほら、私は大輝のことなんて何も知らないんだ。
「大輝」
声をかけてピッタリとくっついて隣に座った。
大輝は私をチラリと一瞥しただけで何も言わない。
「今日試合だったんでしょ?マッサージしてあげるから家に帰ろう」
「何も聞かないのか」
「何か聞いて欲しいならハッキリ言って」
「…別に」
「たくさん汗かいてるでしょ?お風呂に入らなきゃ。ご飯も食べて、マッサージしよう。ね」
さつきに「大輝見つかりました。とりあえず私の家に連れて帰ります」とメールを打って、大輝と手を繋いだ。
家に着くなり大輝は私のことを力一杯抱きしめた。今までも幼馴染とはいえ異常な距離感だったことは十分承知しているが、こんなことをされたのは初めてで戸惑ってしまった。大輝はそんな私の様子を感じ取ったのか「わりぃ」と言って体を離した。抱きしめ返さなかったことを少し後悔した。
「お風呂にする?ご飯食べる?」
「風呂…借りるわ」
試合中に何かあったのだろう。さつきに聞けば早いが、本人と話がしたかったのであえてさつきには聞かずに大輝を待った。十分ほどでシャワーの音は止み、下着姿の大輝が出て来た。惚れ惚れするような均整のとれた体だ。
「髪乾かしてあげるから、おいで」
無言のまま私の前に腰を下ろした大輝。なにも纏っていない背中は思っていたよりも大きい。そっと背中に手のひらを当てると怪訝そうに「なんだよ」って。聞きたいのはこっち、何があったのかちゃんと話してくれないとわからない。私はあなたのことが知りたい。
短い髪の毛をタオルで拭きながら大輝の言葉を待つ。
しばらく無言のままだったが、やがてポツリポツリとことの顛末を話してくれた。
「試合の途中で、相手チームが全員プレーをやめたんだ」
「何それ」
「俺が…強過ぎたから」
「強くなって何が悪いの?強くなりたかったからたくさん練習したんでしょ?」
「その結果が今日の試合だぜ、笑えるだろ」
「何も笑えない」
「は?」
「大輝は誰よりも練習して強くなったんでしょ?その相手の子たちは大輝よりも練習量が少ないから、大輝に歯が立たなかったんでしょ?それなのに強すぎる大輝のせいで試合にならない?何言ってんの」
どうして純粋に実力を伸ばそうとしていた大輝が、そんなことを言われなければならなかったのか。単純に疑問に思ってそう言ったのに、大輝にとっては予想外の言葉だったらしく「やっぱお前最高だわ」と振り返った大輝に再び抱きしめられた。
「さすがに裸の男の子の抱きつかれると恥ずかしいんだけど」
「まだ俺のこと男の子だとか思ってるわけ?」
「大輝は男の子でしょ、」
「ガキはこんなことしねぇ」
「んぅ!?」
突然ぶち当てられた唇。
キスと呼ぶには拙くて荒々しかった。
「なぁ、」
「…なに」
「お前だけは何があっても俺の味方でいてくれよ」
「そんなの当たり前でしょ」
今度は私が大輝にキスをした。
唇ではなく額に。
「ご飯用意するから待っててね」
そう言って頭を撫でると「だからガキじゃねぇんだって」と頬を赤く染めた大輝。公園で見つけた時の危うさは消えており、いつも通りの穏やかな空気が部屋中に溢れていた。
