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青峰視点

洛山の優勝で幕をおろしたインターハイから早一週間、先日ナマエと約束した祭の日まであと三日と迫っていた。

ナマエは海常のみんなから一緒に行かないかと誘われたが、先約があるからと断ったと言っていた。俺もさつきや良から誘われたが同じように先約があると断った。

「なぁに難しい顔してんだ?」
「へ?そんな顔してた?」
「ここんとこ皺寄ってたぞ」

いつもようにナマエの家でべったり体を寄せ合っているのだが、ナマエはどこか上の空だし何か考え込んでいるようだ。眉間に皺を寄せて、こういう顔をするときは大概何かに悩んでいるときで、多分俺に言いたいことがあるんだろう。でも、また自分が年上だからとかくだらないこと考えてそれを俺に伝えるのをためらっている、そういうときの顔。

眉間の皺を伸ばすように優しく撫でると、ナマエの顔は熱が集まったように真っ赤になった。

「言いたいことあるなら言えよ」
「え?」
「俺がお前の考えてること何もわかんねぇと思ってんの?また年上なのにとかくだらねぇこと考えてんだろ」
「………」
「図星なんだな。年上とか年下とか置いといて俺とナマエは彼氏と彼女だろ、俺だってお前のこと好きなんだからお前の願いはできるだけ叶えてやりてぇと思ってんだぜ」

こいつに回りくどい言い方をすると話が悪い方向に進んで行くのは目に見えていたから、できるだけわかりやすいようにはっきりと自分が思っていたことを伝えた。当たり前だろ、俺はずっと昔からお前のことが好きだったんだ。お前がやりたいことには付き合ってやりたいし、なにより多くの時間を共有したいと思っている。

「今度のお祭りのときに…」
「ん?」

後ろから抱きしめ首筋に唇を這わせながら言葉を待つ。恥ずかしいのかしどろもどろして、手は落ち着きなく俺の手や足をつついたり撫でたり。こういうところは本当に年上に見えなくて、小さいこいつのことは俺が守ってやらなければと思う。

「あのね、」
「どうした?」

誰にも聞かせたことのない優しい声で返事をすると、ナマエは安心したように息を小さく吐いた。

「大輝と一緒に浴衣着てみたいの」
「浴衣?」
「何年か前に…大輝とさつきが一緒にお祭りに行ったとき、一緒に浴衣着て行ってたでしょ?思い出して…その、」
「羨ましくなったわけ?」
「…うん」

一緒に行ったといっても最初だけで、俺はすぐに自分が食べたいもののために屋台に行ってあいつとはぐれたなとか、いくらなんでも女子相手にあれはひどいなとか、そもそもさつきを女子として認識していなかったなとか、色々なことを思い出した。

大体あの時ナマエはその時付き合ってたやつと祭に行ってなかったか、と余計なことを思い出して少しだけヘコんだ。当時のナマエは俺の気も知らないでペラペラと彼氏のことを語っていたっけ。

「あのときお前彼氏いたじゃん」
「え?うん、そうだね」
「サッカー部の、なんだったっけ」
「宮野くん」
「なんかそんなやつ。俺が妬いてたの知ってたか?」
「…ごめん、全然知らなかった」
「だろうな」

気にしていないと言えば嘘になるが、今更何かを言ったって過去が変わるわけではない。そう思っていたのに、俺と初めてセックスしたときのナマエが処女じゃなかったことを思い出すと、心の中にドス黒い何かがポツリと落ちてきて、あっという間に身体中を黒い感情に染めてしまった。

無意識のうちに抱きしめていた腕に力を込めてしまっていたようで、少しだけ不安そうな顔をしたナマエが下から俺の顔を覗き込んだ。こんな顔も昔の彼氏に見せていたんだろうか、この形のいい唇でキスしたんだろうか、ナマエの白くて綺麗な体を見たことがある男が何人いるんだろうか。…俺はそんなやつらに勝てるのだろうか。

「大輝?」
「いや、悪い…なんでもねぇ」
「嘘だ」

いつの間にか体を反転させて俺と向き合っていたナマエは、先ほど俺がナマエにしたように俺の眉間に手を伸ばし指で優しく皺を伸ばすように撫で、そのまま俺のほっぺたに手を添えて形のいい綺麗な唇を俺の唇に押し当てた。

「な、」
「何年一緒にいると思ってんの。わかるよ、大輝が思ってること」
「なんだよ、さっきの俺の真似?」
「わかっちゃった?」
「今俺お前の昔の彼氏に超妬いてる。だせぇけど」
「そんなことだろうなと思った」
「ナマエの初体験っていつ?」
「ん〜、高二のときかな。大輝より遅いよ」
「相手は?」
「そのときの彼氏の坂本くん」
「何回くらいした?」
「全部で五回もしてないと思うよ。だから既に大輝とのエッチの方が多い」
「ならいい」
「いいこと教えてあげようか」

ナマエはいたずらを思いついた子どものように嬉しそうに笑って俺の耳に口を寄せて言った。

"大輝とのエッチが一番気持ちいい"なんて言われて一瞬で頭に血が上ったのがわかった。全身の血液が逆流したように体が熱くて恥ずかしくて嬉しくて。っていうか健全な男子高校生相手になんてこと言ってくれるんだこの女。完全にやる気スイッチ入ったじゃねぇか。

たまらなくなってその場に押し倒し随分と荒いキスをしながら胸を揉みしだいた。結局は年上のこいつにうまく転がされている気がしたが今はどうでもいい。丸裸になって思っていることを口にして伝え合って、俺たちがお互いを大切に思っていることを再認識した。

浴衣の件は…たまには悪くないかと了承した。
俺とのデートのためにと着飾るナマエの浴衣姿を思い浮かべるとニヤけるのを我慢ができなかった。


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