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前半戦、点数的には一進一退。
しかし涼ちゃんの疲労は大輝のそれとは全く違う。食らいつくのに精一杯、そんな風に見えた。

でも正直…あの大輝相手に涼ちゃんがここまでやれると思っていなかったから頬が緩む。あれだけ頑張ってきたんだ、大輝に負けて欲しいわけじゃないけれど、涼ちゃんの努力が報われる日が来ても良いのではないかと思った。

海常はチームワークを重視した良いチームだ。最初から上手く連携をとって点数を重ねたが、大輝は尻上がりに調子を上げていくタイプのプレーヤー。後半に向けて追い上げられ、そのまま点差が開いてしまうのは想像に難くない。どう切り抜けるのだろうか、海常は…。

何度も何度も同じコートの中で対峙する涼ちゃんと大輝、しかし第二クオーターの途中から涼ちゃんの目つきが変わり、コート内の雰囲気が変わった。大輝の調子が上がっているのは目に見えてわかるが、涼ちゃんが全くついていけないほどではないのにボールが奪えないのはなぜか。笠松くんを始め、他のメンバーも何かをしようとしている…?

第二クオーターが終わり、ハーフタイムに入って選手たちが控え室に戻っていったのに合わせ、私も控え室に向かった。

「あれ…黄瀬くんは?」
「今ちょっと表に出てます」
「笠松くん…なにか作戦があるの?黄瀬くん、なんか変じゃない?」
「あいつは…青峰のコピーをしようとしてます」
「え…」

以前涼ちゃんの口から聞いたバスケを始めた時のこと。大輝のプレーに憧れ、大輝に勝つ日を夢見て練習に励んだこと、憧れているからこそ負ける姿を見たくないと心の底で願ってしまっていること。そんな思いを抱えていたはずの涼ちゃんが大輝のコピーをするということは、憧れることをやめるということで、大輝を目標ではなく越えるべき相手だと定めたということ。

大輝のコピー、それはプレーヤーとして彼が大きく変わろうとしていることを意味していた。

第三クオーターが始まり、涼ちゃんの準備が整うまでは他のメンバーが必死に時間を稼いでくれていた。そして再び涼ちゃんと大輝が対峙したとき…コピーが完成した。

「すごい…」

まるで大輝が二人いると錯覚してしまうような凄まじい速さのやりとりだった。

キセキの世代最強と言われた大輝のコピーを完成させた涼ちゃんであれば、大輝と対等に戦える。海常が桐皇に勝てるかもしれない、そんな空気が漂っていたが…私の頭にあるのは違うところへの不安。涼ちゃんが大輝の動きをコピーするということは、慣れないスタイルで体を酷使するということを指しているのだ。自分の体のことだから最後まで戦ったらどうなるかくらいわかっているはずだ。それなのにコピーをやめないということは、そんな犠牲を払わなければ勝てないということ。

第四クオーター、運命の別れどころ。
大輝にはまだ余裕があるように見えるが、涼ちゃんの息は上がっている。

「涼ちゃん…!待って!」

大輝がゴールを決めれば、涼ちゃんが全く同じフォームでゴールを決める。そんなゴールの応酬に体が限界を迎えている。点数が中々ひっくり返らないギリギリの状況で監督もコートの中のメンバーも誰も涼ちゃんの異変に気付いていない。

ラスト一分、どちらもゴールを諦めなかった。
涼ちゃんは最後まで大輝に食らいついた。
それでもホイッスルは鳴り、海常は負けた。

涙を流す涼ちゃん、そんな彼に声ひとつかけない大輝、どちらにも声をかけたかったけれど私は涼ちゃんに駆け寄った。

「負けちゃったッス…」
「カッコよかった、本当に」
「ありがとう…ナマエさん」

涼ちゃんを座らせ、いつも以上に念入りに足をケアした。今まで何度も触れてきた彼の足だ。誰よりも知っているはずの足は、今までに感じたことがないくらい疲弊していた。

「明日も揉むから」
「え?」
「明日も明後日も、私が揉むからね」
「…うん」
「ちゃんとケアして、冬の大会に臨もうね」
「はいッス…だから泣かないで」
「泣いてないよ」
「うそ。どうしたの?」
「海常が負けて悔しい、こんなになるまで涼ちゃんが頑張ったのに」
「はぁ〜俺もまだまだッス、帰ったらたくさん練習しなきゃ。次こそは青峰っちに勝つッスよ」
「うん、楽しみにしてる」

私なんかより泣きたいのは涼ちゃんの方だろう。それなのに優しい彼は涙が止まらない私の頭をひたすら撫でてくれた。伸びしろは十分にある。次の戦いに向けて、彼らの準備は始まろうとしていた。


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