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昨日空き巣の件について話してくれたクラスメイトにその後のことを聞いてみたが、犯人は未だ捕まっていないようだった。クラスの中には私のほかにもひとり暮らしをしている女の子は数名いて、どこか他人事に感じながらもみんな怯えていた。

「私怖くてバイトのシフト変えてもらったよ〜」
「私は今日休みなんだけど…明日はでなきゃいけなくて」
「怖いよね。こんな時彼氏がいたらなぁ…」
「そうだよね」

早く捕まってくれないかなぁ…。でも、犯人が捕まったら大輝とは毎日会えないかもしれない。毎日私の家に来てもらう必要はなくなるし、何よりインハイ前だから無理させちゃいけないし。

まあ、本音と建前色々あるけど…私はただ一緒にいたい。

午後四時過ぎ、全ての授業が終わり学校を出る。
今日はバイトがないからそのままスーパーに寄って帰ることにしよう。晩ご飯、何を作ったら喜んでくれるかな…。部活終わりの疲れた体に必要なもの、最近買ったアスリートの体作りに最適な料理を数多く掲載した料理本の内容を思い浮かべる。時間がある日くらい、日頃の感謝の気持ちを込めて手の込んだ料理を作ってあげたいなんていうのは結局自己満足でしかないんだけど。

あれこれ悩みながら食材を手に取りカゴに入れる作業を繰り返していくと、いつの間にか片手で持つのが難しくなるほどカゴが重たくなっていた。とりあえずこれくらいあればかなりの品数作れるだろうと、思い浮かべていた数品を諦めてレジに向かった。

パンパンに膨れたレジ袋を両手に抱えて家を目指していると、赤色灯を回したままのパトカーが数台アパートのまわりに停まっているのが見えた。

まさか、空き巣…?自分の部屋が狙われたのではないかと心配になり、急いで家に上がろうとするも警察に止められた。レジ袋を持ったままの手はジンジンと痺れている。

アパートの契約の時に会って以来殆ど顔を合わせていなかった大家のおじさんにここのアパートの住人であることを証明してもらい、先ほど行く手を阻んだ警察の人に事情を聞くと空き巣に入られたのは私の部屋の真下の部屋だったそうだ。私同様に女性がひとりで暮らしていて、いつも決まった時間に会社に行って決まった時間に帰宅する規則正しい生活をしていたらしいのだが、たまたま体調不良で会社を休んでいたところ犯人に出くわしてしまい、取っ組み合いになって怪我を負ってしまったらしい。女性が咄嗟の判断で逃げ出す犯人の写真を撮ったことと、素早い通報により犯人は数時間後に身柄を確保されたらしい。

捕まって良かったと思う反面、犯人に出くわしてしまったのが私だったら?そう思うと体の底から恐怖がせり上がってきてガタガタと震えが止まらなくなった。買ってきた食材をしまうことも忘れて、柔らかいラグの上に座り込んだまま大輝のにおいがするスウェットを抱きしめた。深呼吸を繰り返しながらそのにおいを吸い込むと少しだけ心が落ち着いた。

…何時間そうしていたのかわからない。もしかしたらそんなに時間は経っていないのかもしれないがいつの間にか外は暗くなっていた。

ぼーっとしていると玄関のドアがガチャっと開かれ、その音でようやく意識を外に向けた。

「ナマエ?外に警察いたけど何かあったのか」
「だい、き…」
「お、おい、どうした?」

慌てて駆け寄って来てくれた大輝の太くてたくましい首に両手を回して力一杯抱きしめた。ああ、安心する、大輝の温度とにおい。

「ナマエ?大丈夫か?」
「…空き巣が、捕まったんだって」
「おおマジか。良かったな」
「この部屋の下の部屋が空き巣に入られたらしくて…」
「それで警察がいたのか」
「会社員のお姉さんが一人で住んでたんだって、今日たまたま会社休んで寝てたところに犯人が入って来て、怪我させられたって」
「マジか」
「もしあの時大輝が泊まりに来てくれなかったら?大輝の洗濯物干してなかったら?犯人が空き巣に入ったのうちだったかもしれないって思ったら怖くて」
「もう捕まったんだろ?考えすぎだって」
「…私大輝がいなかったら何もできない」
「いいじゃん」
「隣にいてくれるのが当たり前になっちゃって…もう怯える必要ないなら大輝が毎日ここにくる理由もないのに、無理させたくないのに、離れたくないよ」
「俺だってそうだっつーの」

後頭部に大輝の大きな手のひらが添えられてそのままぐっと引き寄せられ、少しカサついた唇が触れた。ああ…安心する。

「なぁ、向こうの家行こう」
「え?どうして」
「現状報告しなきゃなんねぇだろ。親父さん達心配してる。それに犯人が捕まったなら俺がここに居続けるのもおかしな話だろ」
「でも私大輝といたい」
「それもちゃんと説明しなきゃいけねぇだろ」
「え…?」
「言うから、俺が」

大輝はそう言って、私の実家へと電話をかけた。
例の件空き巣の犯人が捕まったこと。私の部屋の真下の部屋に空き巣が入ったこと。私が怖がっていること。少し遅くなるかもしれないけれど、今から一緒に帰ること。

電話を終えると大輝は私の家に置きっぱなしだった制服や教科書などをまとめ始めた。なにがっかりしてるの、大輝には大輝の学校生活があるんだから私のわがままに付き合わせちゃいけないってわかってたでしょ。…それでも、わかっていても、徐々に綺麗になる部屋を見ると心細くなった。

「なにこの世の終わりみてぇな顔してんだ」
「大輝帰っちゃうんだって思って」
「誠意見せねぇと」
「誠意?」
「お前と付き合うの、適当じゃねぇから」

私ばっかり子どもみたいで恥ずかしくて情けなくて。大輝はこれからずっと先のことも考えて言ってくれてるのに、私は目先のことばっかり。これじゃどっちが年上かわからない。

「ナマエ、あのさ」
「なに?」
「なんか襟がついたシャツとかに着替えてくんね?」
「どうして?」
「いや流石にキスマーク見えたら怒られそう」
「!」

ここんとこ、微妙に見えそう。と言って左の鎖骨のちょっと下を指差して決まり悪そうに頬を掻く。

「もう、いっぱいつけるからじゃん」
「お前が俺のもんだって実感したいじゃん」
「私はずっと大輝のものだよ」
「その言葉忘れるんじゃねぇぞ」

荷物をまとめ、着替えも終えた私たちは手を繋いで私の実家へと向かった。


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