戦争とまではいかないが、小競り合いばかりが続く里と里。いつまでもこんな争いが続いているようでは子供達の未来は暗い。波風ミナトはそんな不安を具現化してしまったようなひとりの孤児を見つけた。まだまだ幼い女の子。近くに人がいる気配はない。親は……死んでしまったのだろうか。
「はは、笑ってる」
汚れを知らないその笑顔が生きる希望を見出してくれるようなそんな気がして、彼はこの子どもをどうしても放っておけなかった。
「ミナト……戻ったか」
「はい。各里とも大きな争いはありませんが…小さな火種が燻っているような感じです。緊張状態と言いますか…いつ大きな争いに発展してもおかしくないかと。それに町人達は疲弊しきっています。」
火影室にて。視察に行って見てきた町の様子を報告すると三代目火影 ヒルゼンはとても渋い顔をしてため息をついた。
「やはりな。して、ミナト…その腕の赤子は」
「この子は里の境界で見つけた孤児です。俺を見て…笑ってた」
「ほう」
「火影様、この子…俺が引き取っても良いでしょうか」
「お主に育てられるのか」
「家に帰ればクシナもいます。どうしてもこの小さな命を救いたいんです」
「並大抵の覚悟では務まらぬぞ」
「もちろん。しっかりと励みます」
「……よかろう」
火影の許しを得てをミナトが孤児を連れて家に帰ると、彼の妻であるクシナは案の定ひどく驚いていた。突然なに考えてるんだってばね!と。
「無茶なことを言っているのはわかってるんだ。でも俺は…この小さな命を救いたい。この子の親になりたいんだ」
「その子は女の子よ。男だけで育てられる訳が無いんだから!私が母親になるってばね!」
「クシナ……!」
「で、名前は?」
「そうだなあ…」
夫婦二人ソファに並んで、何も知らずに笑う子供を見つめる。
「ーーナマエ、君は今日から僕たちの娘だよ」
*
「きゃー!ナマエが歩いたってばね!!」
「本当かい!?!?」
「今日はお祝いだってばねー!!!」
「ケ、ケーキ!買わなきゃ!!」
ナマエは順調に育っていた。
ハイハイをするようになり、つかまり立ちを覚え、次第に歩けるようになった。ミナトのことをパパと呼び、クシナのことをママと呼んだ。たまに様子を見に来てはひどく甘やかして帰る三代目火影やミナトの師匠である自来也のことをおじいちゃん、じーじなんて呼んだりするものだから、夫婦が冷汗をたらすこともしばしば。それでも毎日笑顔で元気いっぱいに育っていった。
そんな目まぐるしい日々を過ごしている最中、ミナトは火影室に呼ばれ担当上忍になることが決まった。未来を担う子ども達に指導が出来るのは嬉しい。でもナマエと会える時間が少なくなるかな、なんて不安も少なからずあった。
「ミナト急いでー!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「パパはやくー」
「ん!よし!行こうか!」
今日はナマエのアカデミーの入学式。
うんうん、俺たちの自慢の娘は順調に育ってくれている。なんと嬉しいことだ!とミナトは娘の晴れ姿を見て感涙を流していた。
「ちょっとミナト泣かないの」
「だって…俺達の娘が…もうアカデミーに…」
「これだから親バカは困るんだってばね」
子どもの成長とは想像よりもあっという間である。これから先、忍として生きるミナトが大切な娘と過ごす時間は、もしかするととても短いのかもしれない。