「カカシにお願いがあるんだ」
「なんでしょう。先生」
「今日までクシナの護衛任務ご苦労だった。出産は極秘事項であるから、これで任務は解くけど…ナマエをお願いできないかい?」
「ナマエを?」
「ああ。本当は口外できないんだけど……理由がいるよね。クシナの体には九尾が眠ってる。出産にはとても大きなリスクを伴うから里から離れた所で出産を行うんだ。俺も封印のために同行する。その間ナマエを見ていてほしい。」
「はい」
「任務ではなく個人的なお願いなんだけど、いいかな」
「ミナト先生のお願いなら喜んで」
「ありがとう、カカシ」
ミナトに言われたとおり、カカシは今日一日ナマエの面倒を見ることになった。面倒と言ってもナマエは幼いなりに一人で何でもできるようなので特に世話を焼く必要もないのだけれど。
「カカシ久しぶり!」
「ああ、元気?」
「うん!」
「先生とクシナさんいないけど寂しくない?」
「うん、もうすぐ弟がきてくれるから」
「そうだね。お姉ちゃんになるんだもんな」
「うん。カカシみたいに強い忍になる。弟を守るの!」
「そりゃ頼もしい限りだね」
ナマエを連れて里の中をぶらぶらしていると、色んな連中に会ったが面倒くさがりのカカシは知らんぷり。絡んできたガイを適当に受け流しているとなんだが嫌な気配を感じた。
「ナマエ、俺から離れるな」
「カカシ?」
「嫌な予感がする」
里に九尾が現れたのはそれからすぐのことだった。カカシたち若い世代は戦うことも許されず、黙って里が崩壊して行く様を見ているしかなかった。
(ミナト先生は?クシナさんは?生まれてくるはずの子供はどうなった?)
「ナマエ、落ち着いて聞くんじゃ」
「三代目…!」
「おじいちゃん?」
「お前の父と母、ミナトとクシナは死んだ」
「パパとママが……?」
「ああ。すまない。守れなかった」
「弟は、ナルトは…?」
「ナルトは、元気じゃ」
「そっか…よかった…っ」
突然現れた三代目火影が連れていた赤ん坊こそ、ミナトとクシナの子ども、ナマエが誕生を待ち望んでいた弟だった。ナマエは父と母が死んだことを聞かされても泣かなかったが、弟が無事だったことを知ってようやく涙をこぼした。
「ナマエ…」
「カカシ…」
「思いっきり泣いていいよ」
大声で泣くナマエをみて、カカシは少しだけ羨ましくなった。あのとき、自分もこれだけ堂々と泣けたなら、少しは気が紛れただろうかと。
その後、ナルトを託された三代目火影が下した決定はあまりにも残酷なものだった。
九尾事件を口外してはならない。
ナルトの両親について口外してはならない。
ナマエはナルトと姉弟関係であると口外してはならない。
ナマエは波風姓を、ナルトはクシナのうずまき姓を名乗ることとなった。これにより事実上他人となってしまったのである。
「せっかく会えたのになあ…」
「仕方ないよ。ナルトを守るためだ」
「うん」
「三代目様から聞いたんだけど、クシナさんが死ぬ間際に…俺にナマエを頼むって、」
「ママがカカシに?」
「寂しいかも知れないけど、俺がちゃんとお前のこと守るよ」
「うん。私も…もっと強くなる。」
「お前の家も壊れてなくなっちゃったんだろ?うちに来る?」
「…うん」
それからナマエはアカデミーを卒業し、出来るだけ外に名前が知れないようにカカシと同じ暗部に配属された。この時ナマエはまだ十歳に満たない年齢だったが、すでに暗部に配属されるに相応しい実力を兼ね備えていた。
誰もがさすがは四代目火影の娘だと思った。
「カカシ!大丈夫?」
「ああ…っ」
「後ろは任せて」
「頼んだよ」
いつの間にかナマエは、カカシが安心して背中を任せられるほどの存在になっていた。