20年と少し昔の話 それから時は流れ、男の子は王子さまとして王様とお妃さまと幸せに暮らしておりました。 王子さまが2回目の夏を迎えようというある時 今度は双子の男の子が生まれました。 このところ続いている季節柄の雨にも関わらず彼らは大きな産声をあげて、 今度も二人ともそれはそれは元気で可愛らしい男の子たちです。 先に生まれた男の子には ケイ と 次に生まれた男の子には レイ と 名付けました。 彼らは しるし を持っていました。 王子さまにはまだ しるし がありません。 王さまは急いで2人の魔女と1人の魔法使いを呼び出しました。 2人の魔女は口を揃えて王子さまを 何者かが遣わした災いの子 と叫びます。 2人の魔女は口を揃えて王子さまを すぐに殺してしまうのです と叫びます。 お妃さまはそれを聞いて恐ろしくなり泣き出してしまいました。 王さまは1人の魔法使いに聞きました。 これはどういう事なのだ? 魔法使いは答えません。 お前を 信じていたのに 魔法使いは目をぎゅっと瞑って黙ったままです。 少しして、何かを決めた魔法使いは目を開き跪いて 『もう一度 私を信じてください』 と王さまの靴のつま先に口づけました。 『私にはこの子が災いの子とはどうしても思えないのです。 現に昨年は大きな争いや諍いもなく五穀豊穣に恵まれ国民の皆が穏やかに健やかに一年を終え、こうして新たな年も平和そのものに日々過ぎております』 それはそうだが、しかし… 魔法使いは構わずに続けます。 『例えば災いの子であるとするならば 殺してしまうのもまた不吉なこと』 2人の魔女はお互いに顔を見合わせています。 魔法使いは顔を上げて王さまを見据えました。 『どうかこの子を私にお預けください』 王さまは思いもよらない魔法使いの言葉に驚いて目をパチパチさせています。 『――ならば、この子を何者かが遣わした災いとするならば』 魔法使いは呟き、すっくと立ち上がると徐にお妃さまの隣ですやすやと寝息をたてるケイ王子を抱き上げて額に口づけました。 『王子を決して裏切れぬように契約の呪を結ばせ 彼のために 彼を護り 彼のために その命を尽くすように私が 育てます』 『私の命を 全てを 懸けましょう』 魔法使いのその瞳は熱く熱く、泣き続けるお妃さまをなだめるかのように優しく捉えておりました。 |