brother 兄さん。 もうしばらく口にしていないその言葉は、 胸の奥で、いつも俺を待っている。 最近、そんな気がする。 幼い頃は、よく俺の髪を撫でてくれて、 優しく笑っていた。 普段は気にならないのに、 笑っている時の瞳は何だかとてもあたたかくて、 まるで彼のすべてがそこにあるようで、 見惚れてしまうほどに綺麗で、 その琥珀の鏡に自分が映るのが、 とても心地よかった。 穏やかな人。大好きな人。 そんな、兄さんみたいになりたいと思った。 そしてそれは今も変わらない。 手を伸ばせば、きっとまだ届く筈だ。 少しだけ遠くなっただけ、なんだよな? 少し走れば、きっとまだ追いつける筈だ。 きっとまた、笑ってくれる。 20111123 |