6 月日が経つごとに、国は活力を取り戻し、そしてそれに比例して、日々也の顔から明るさが消えていった。時折、疲れた顔をして座り込んでいることを、門田は知っていた。 その日も、日々也は倦んだような目をして、一人窓辺に佇んでいた。その真っ直ぐな細い背に、門田は声を掛ける。 「疲れたのか?」 「ああ、門田さん…。いえ、そんなことはないですよ」 だが、日々也は既に門田を視界におさめてはいない。その目は、豪奢な細工の施された窓枠から、城の裏の景色を見ている。つられて窓からの景色を見るが、そこにあるのは暗い森ばかりだ。 多少の躊躇いはあったが、門田はゆっくりと口を開く。 「隣国との領土確定、無事に済んだみたいだな」 「…はい」 「…帰ってくるんだろ?」 誰が、とは言わなかったが、日々也は目に見えて体を硬直させた。 「やはり、知っているんですね」 彼のことを。と日々也は力無げに笑う。門田が気まずげに頷くと、日々也はまた、暗く濁った目を森に投じた。 「彼さえいれば、私は他の何をも求めなかった。愚かだとお思いでしょう。一人の人間に心を奪われ、私は国を滅ぼすところでした」 * * * 彼をはじめて見たのは、薄暗い空からちらちらと雪の舞う日だった、と日々也は語った。 日々也の領土では、雪はそれほど珍しくはない。その日も、数日前に降った雪が足首の高さまでに積もっていて、その上に粉のような雪が舞い落ちていたのだ。けして珍しくはないそんな雪の日に、日々也が城を抜け出したのは、ほんの気紛れだったという。 日々也は為政者としての執務に忙しく、また臣下を困らせるような真似はしない。なので、護衛も付けず誰にも何も言わず城を抜け出したのは初めてだった。 「どうしてそんなことをしたのか、私自身にも分かりません。本当に気紛れだったとしか」 生まれたときから住んでいる城のことだ。人の少ない場所も、警備の薄い、しかも城壁の崩れている箇所も知っている。何食わぬ顔で、庭に出て、そのまま城の裏へと向かった。 崩れた城壁から外に出ると、森に通じている。狩猟などで幾度か入ったことがある森だが、今は雪が積もって風景が一変している。それでも臨也は、迷わずに足を進めた。 積もった雪は音を吸い込む。それ故、その森はいつにも増して無音で、いっそ耳が痛むほどの静寂に包まれていた。 葉が落ちて寒々とした木々の合間を抜けて、やがて日々也は一面の雪原に出た。春は芽吹いたばかりの若葉の鮮やかな緑に染まり、夏は野の花が一面に咲き乱れる野原も、今は一面に雪が積もっていて、他の色彩を失っていた。 そこで、日々也は彼に会った。 「あるいは、私はこうも思うのです。私があそこで彼に会ったのは、逃れることのできない運命だったのだ、と」 一面の白の中で、彼は同じように白い衣服を纏い、雪原に倒れていた。瞼が伏せられたその顔も、舞い落ちる雪と変わらないほどに白く、日々也は彼が死んでいるのだと思ったほどだ。 だが、慌てて雪に埋もれそうなその体を抱き起こしてみると、彼は生きていた。触れた皮膚は冷え切っていたが、かさついた唇に触れると、かすかに吐息が確認できた。 息があったことに安堵して、思わずその体を強く抱き寄せると、ふと腕の中の彼が小さく声を零した。肌を震わす程度に身じろぎして、彼は瞳を開ける。 あらわれたのは、日々也がかつて見たことのない、透明度の高い薄紅色の瞳だった。雪原のそれ以外の色を失ったような純白の中で、唯一生まれたその色彩の鮮やかさに、日々也は言葉を失った。 「…そのときに、私は彼に囚われたのです」 日々也の看護のもとで回復した彼は、デリックと名乗った。故あって遠方の国から流れてきて、行き倒れていたらしい。 あんなところで寝ていたら、もう少し見つけるのが遅ければ死んでしまっていたかもしれないんですよ、と言うと、彼はあっけらかんと笑って見せた。 『でもお前が見つけてくれただろ?』 だから、あそこにいてよかった。そう彼は言った。 日々也は途方もなく幸せだった。その幸せが、王としての輝かしい才覚を失わせていくものだと、日々也は気づかなかった。 デリックは、日々也の思いを、まるでそれが摂理に適った当然のことであるかのように受け入れた。 デリックは口調も仕種も乱雑だが、明け透けで鷹揚な性格で、はじめは突如表れた男に不信感を抱いていた他の臣下もすぐに彼の存在を受け入れた。何より彼が、兵の指揮者として才覚を発揮したことが大きい。すぐに彼は重宝されるようになった。 だがそうすると、今度は日々也が平静ではいられなかった。デリックが、あの鮮やかな薄紅色の瞳を細めて、他の人間に笑いかけているかと思うと、胸が痛む。 更に他の臣下と何か冗談を言い合い、笑いながらデリックが他の人間の肩に手をかけているのを見たときの衝撃はあまりに大きかった。それは、日々也がそれまで培ってきた善良で有能な王としての基盤に、確実に皹を入れたのだ。 日々は片時も離れないようにデリックを側に控えさせるようになった。それだけに留まらず、デリックが他の人間を見ないよう、日々也はデリックを伴い、自室に篭る時間を増やしていったのだ。 デリックは日々也に何も求めないし、日々也を咎めない。何か欲しいものがあるかと聞いても、『日々也がいればそれでいい』と淡く微笑むだけだ。政務を投げ出してデリックと寝室に篭っていても、何も言いわずに日々也の腰に足を絡めてくる。 愚かしいほどに幸せで、彼の白い肌と薄紅色の瞳ばかり映して曇ってしまった日々也の眼には、他のものなど入りはしなかった。 「彼が離れるまで、私は自分が王であることさえ忘れていました」 倦みつかれた瞳で、日々也はそう言った。それはまるで濁りを孕んだまま凍りついた水面のように澱んでいて、門田は指先をこわばらせる。 「でも、今のお前はもう違うだろ。そいつが帰ってきても、もう大丈夫だな?」 何故か尻込みしそうになる自分を叱咤して門田は問う。すると日々也は、澱んだ瞳のまま、口元だけ綻ばせて悲しげに笑って見せた。 「そうありたい、と思っています。王として、民のために生涯を捧げる身でありたい、と」 けれど、と小さな呟きが続く。日々也は、また窓の外を見た。そこには暗い、迷い込めば抜け出すことなど望めないような、暗い森が広がっている。この森の中に、冬になれば純白それ一色に染まる美しい野原があるとは、門田には思えなかった。 だが日々也の虚ろな瞳は、今も、その雪原を見ているのだ。 「けれど私は、今すぐにでも彼に会いに行きたい。彼のあの白い頬を撫でて、あの不思議な色の瞳が潤む様を見たい」 考え出せばそれは留まることを知らず、デリックが他の人間に肌を寄せているのではないかなどと疑っては嫉妬に胸を暗く燃やすのだという。 「政務に励み、国の再生に喜びが湧き上がる一方で、こんな思いが日を追うごとに強くなっていくのも感じるのです。次に彼に会ったとき、どちらの思いが勝つのか、私には、分からない…」 7 日々也は、城のバルコニーに出て街並みを見下ろした。昼下がりのあたたかな日の光が石畳の道を照らし、磨かれた石の断面がきらきらと輝いている。その道を行く人々の顔は希望に溢れ、王である日々也の思慮深さと善政を謳っていた。 その光景は、日々也の心を慰撫するには十分なものだった。この景色を見るために王となったのだ、と心を新たにして、瞼を伏せる。直後その背に、細く長い影が落ちた。 「日々也」 よく通るそれは忘れられるはずのない声だった。ずっとその声に溺れていた。離れてからも夢の中で追い求めた声だった。その声で名を呼ばれる日を、どれほど待っていたことか。 振り返ると、白い衣を身にまとった彼が、同じく白い頬を少しだけ赤く染めて日々也を見ていた。 白のスーツを纏う白い体が躍動して、日々也へと走り寄ってくる。その体を思わず日々也が抱き締めると、彼はうっとりと瞼を伏せた。 その滑らかな頬を日々也が指先で撫でた、そのときに不意に、高く澄んだ小鳥の鳴き声が聞こえてきた。思わず耳をそばだてると、石畳の道を行き交う人々の明るい声もかすかに聞こえてくる。 日々也は我に返って、デリックの体を離した。 「…日々也?」 「あの、すみませんデリックさん、その…」 かつてない拒絶に不審げな声をあげるデリックに、日々也は慌てて何か言葉をかけようとする。だがデリックの顔が悲しみに歪んでいるのを見ると、胸が締め付けられるばかりで何の言葉も浮かびはしなかった。 「俺が嫌いになったのか?」 「…そんなこと、あるわけないです」 その答えを聞いても、デリックは納得のできない顔をして日々也の顔に触れ、日々也の瞳の奥を覗き込んでくる。日々也が久しく見ていなかった彼の鮮やかな薄紅の虹彩に見とれていると、デリックはふと視線を逸らした。 「…俺よりも、夢中になるものができた?」 普段はおおらかで明るいデリックが、瞳を曇らせて俯いている。煌めく金髪が頬に掛かり、顔に暗い影を作っている。その心細げな風情に日々也は、一度は彼を突き放した手を、再び伸ばしていた。 日々也から触れると、彼は酷く嬉しそうな顔をした。金の髪を梳くと、白い頬に赤みがさして、一目見た瞬間に日々也の心を奪った薄紅色の瞳を細める。無意識のうちに、その目元に唇を寄せていた。 もう、道を行き交う人々の輝かしい表情も目には入らないし、善政を謳歌する声も聞こえてはこなかった。ただもう夢中で、唇を触れ合わせていた。 8 えもいわれぬ不吉な予感を覚えて、門田はバルコニーに出た。 深夜なのに不思議に明るいと思ったら、丸い月が白々しく夜空を照らしている。その光を浴びて、見知らぬ男が一人、バルコニーの手摺に背を預けて立っていた。 出てきた門田を見て、口元を笑みの形に持ち上げる。白い上着が月光に濡れたように青白く輝いている。細められた瞳は、彼が上着の下に着ているシャツと同じ薄紅色だった。 「こんばんは、門田さん。デリックといいます」 彼はそう名乗った。その名を、門田はよく知っていた。善良なあの王に道を見失わせた男の名前だ。 「…俺のことを知っているのか」 「俺が向こうに行っている間も、こっちの情報は手に入れてたんで。日々也に関することは、特に」 王の名を告げるときは、鋭い目つきの瞳が優しくなる。印象の掴めない男だと門田は思った。細身で背が高く、とても整った顔だちをしている。その瞳は鋭いが、笑うと人懐っこくも見えた。 「そんなに日々也のことが気になるなら、どうして傍を離れたんだ?」 尋ねると、デリックはまた笑みを零した。門田はびくりと体を硬直させる。今まで人懐こいと感じていたその印象が一変した。日々也が一瞬で心を奪われたという薄紅色の瞳は、雪の中ではなく月光の下では、ひどく激しく、妖しく、残酷な色をしている。 そして彼は言った。 「鬱陶しい虫を潰すため」 「どういうことだ」 「実際、あの辺りの紛争はかなり厄介だったんで、俺が行ってさっさとぶっ潰したかったんですよ」 それに、と唇の端を吊り上げて、デリックはうっそりと笑って見せた。 「それに、日々也の重臣の何人かが俺を日々也から離そうとしてたから。どうせだから乗ってやった」 デリックの口調が乱雑になってきている。おそらくこちらの方が、彼の本来の口調なのだろう。デリックの瞳は、楽しげに輝いてさえいる。 「…何のために」 「俺が日々也から離れると、奴ら嬉々として俺を殺すための刺客を放ってきたぜ」 それらの刺客を捕らえて、首謀者の名前を吐かせてどの臣下が自分を消そうとしているのかを特定する。そのために、わざわざ日々也から離れたのだという。 「その臣下は、殺すのか」 じとりと嫌な汗が体の奥から滲んでくる。だが門田はそれでもぎゅっと手のひらを握り締めて、更に質問を続けた。すると彼は、今度は人懐こい笑みを浮かべて見せる。無邪気で美しく、残酷な笑みだった。 「殺さない。いなくなると日々也が悲しむし、殺さなくても言うことを聞かせる方法なんて、いくらでもある」 笑みを浮かべたまま、彼はそんなことを歌うように楽しげに言った。そして一歩、門田に近づいてきた。身構える門田を見て、不思議そうにデリックは首を傾げる。 「俺はあなたに危害は加えないですよ。あなたは別に、俺を殺そうとはしていないだろ」 「…だったら、どうして俺に会いにきた?」 「日々也が自ら迎えた男に興味があって」 会えてよかった、と囁くように言って、彼は一歩、また一歩とゆっくりと近づいてくる。その顔には蕩けるような笑みが浮かんでいた。 近づいてきた男が、ゆっくりと、門田の首に腕を回してくる。異様な距離に、門田がデリックの意図を測りかねて、その体を離そうと腕を突っぱねるが、デリックは見た目から想像できないほどに力強く、より体を密着させてくる。滑らかな皮膚の下に流れる熱を感じて、門田は渾身の力でそれを離した。 「やめろ…っ」 デリックは離されても、またすぐに笑みを浮かべた。高く上った月が、金の髪と白い肌を濡らしている。 「本当に、噂に違わず高潔な人物みたいだな」 鮮やかな紅色の自身のシャツに手を掛け、白い首筋をちらちらと見せつけながら、柔らかく微笑む。鮮やかな薄紅色の瞳が、妖しく煌めいた。 「あの王が溺れた肌です。触れてみたくはないですか?」 「何、言って…」 「俺は、あなたが欲しい」 自らのシャツを乱しながら、それでも視線だけはまっすぐに門田を見据えて、デリックが言う。甘い声だった。 彼が何をしようとしているのか理解して、門田は体を硬直させた。 「…お前は、日々也を愛してるんじゃないのか」 そう聞いたときに、門田は自身の口の中がからからに乾いていることに気付いた。そんな門田の焦りを気にした様子もなく、デリックはまた門田の首に腕を回してきた。そして耳もとに唇を寄せて、熱い吐息を吹きかけながら言う。 「…あなたが知る必要は、ないんですよ」 首筋に柔らかで暖かな唇の感触があたる。しなだれかかってくる細い体の熱にあてられて、くらりと眩暈が、した。 9 一番深い暗闇が、ほの青く変わってくる早朝に、城から出て行く影が三つある。まだ暗い闇の潜む城から、足早に逃れようとするように。 それを自室の出窓から見て、日々也は瞼を伏せて重い溜め息を吐いた。すると、音もなく王の寝室に入ってきた長身の男が、悲嘆に暮れる王に優しく声を掛けた。 「何をそんなに嘆いているんだ?」 「…私はあの者たちに、私が愚かな王であるなら、私を見限って欲しいと頼んでいました。私は見限られないように最善を尽くすから、と」 だが、とうとうあの三人はこの城を出て行った。見限られたのだ、と日々也は手のひらで瞼を覆った。そのかすかに震える背に、デリックが白い手を伸ばし、しなだれかかる。 「それは違うぜ、日々也。あいつらはお前を見限ったんじゃない」 甘く、優しく、歌うように男は言う。 「え?」 「あれは自分が何かに執着したら腐るって知ってる男だ。だから執着する前に、逃げたんだよ」 「…執着…?」 何に対する、と問おうとして、日々也ははっと息を飲む。薄闇を仄かに照らす蝋の灯りの中で、デリックの不自然に乱れたシャツの襟元に目が行った。艶かしい白い首の付け根に、昨夜にはなかった赤い痣が見えた。 デリックは自身が持つ魅力とその魅せ方をよく知っている男だ。それがどれだけ他人を虜にするのかも、熟知している。門田が執着が生まれることを恐れて城から出たというなら、それは何に対する執着なのか、日々也はすぐに理解した。 「彼を、追い払いたかったのですか」 硬直する頬をなんとか動かし、日々也が問いかける。デリックは薄紅色の瞳に日々也だけを映し、口角を持ち上げた。 「ああ。邪魔だったからな」 「…なぜ」 「お前の心が、少しでも俺以外に向けられるのは許せない」 たとえそれが、王の勤めであるまつりごとであっても。そう言ったデリックは笑みを浮かべていたが、その瞳は紛れもない激情を湛えていた。 自分のみを日々也の心に住まわせるために、国政への心を喚起させる門田を、己の体を使ってまで追い払った。その事実を知り、日々也は嘆きに己の瞼を伏せる。その頬を、デリックがするりと撫でた。それに促されて瞳を開けると、デリックが柔らかで優しい笑みを浮かべているのが見えた。 「…あなたは、まるで悪魔だ」 軽い目眩のように回ってくる絶望に呆然と呟く日々也に、デリックは優しく慈しみに溢れた表情で、囁きかけた。 「そう思うなら、今ここで俺を殺せばいい。日々也になら、俺はかまわないぜ?」 すべてを享受するような、慈悲深い顔で瞼を伏せるデリックに、日々也はぐっと唇を噛みしめた。腰にかかっている剣に手を掛けるが、しかし柄を握ることさえ叶わなかった。 デリックは、蠱惑的な色彩をもつ瞳を開き、日々也の首に腕を回す。デリックに緩く抱き寄せられ、日々也の視界で、嫌が応にも白い首の付け根に付いた赤い痕が浮かぶ。それを見て湧き上がる熱い血のような激情に、日々也はその理知的な瞳を暗く煌めかせた。それが、自分を堕落させる男に対する怒りではなく、自分ではない者がその肌に触れたことに対する嫉妬だと悟り、そんな自分にまた絶望する。 デリックは、日々也の視線に含まれる深い嫉妬の色に心地よく酔い、うっとりと瞼を伏せた。 「あなたは破滅しかもたらさないのに…どうしてこんなにも愛しいのか…」 腕の中の抗いようのない甘い体温に溺れながら、それでも沈みきる前に息をこぼすように日々也が呟く。それを聞いたデリックは、この世界の何よりも愛する男の背にしっかりを腕を絡めて、熱い吐息とともに囁いた。 「俺がここを発つ日に言っただろ、日々也。俺がお前を忘れることも、お前が俺を忘れることもありえない。俺たちは、互いがいないと生きていけない運命なんだって」 歌うような声が、朝の光を覆って日々也を暗闇に溺れさせる。もう二度と浮き上がれないのだと知りながらも、日々也はデリックの腰を強く抱き寄せ、深い闇に沈み込んでいった。 * * あの雪原で、倒れていた。おそらくそこで死ぬはずだったのだ。それなのに、日々也がそれを助けた。 目を開くと眼前にあった、類稀な金の瞳。日々也のそれを、デリックは至高の宝石のようだと思った。それを見た瞬間に、デリックは悟った。これは逃れられない運命なのだ、と。 相手を求め堕落させ、それでも離れることなど叶わない。互いを縛りながら、底知れない深い闇にともに落ちていくさだめなのだ。どこまでも。 (天国より野蛮) (2011/03/19) |