「なぁ、お前なつめが好きなのバレバレだぞ。」
「ハァア!!?何言ってんだ!!お前!!!」
魚谷の言葉に勢いよく席から立ち上がる。幸い近くになつめはいない。
どこに行ったのかはわからないが、近くにいるのは魚谷と花島と透だ。何故か他の二人も分かりきったような表情でオレを見る。
「お前までそんな目でオレを見んなァ!!」
「痛い痛い痛いですぅ!!」
透の頭を拳骨で挟む。まさか透にまでそんな風に思われていたなんて。
「まぁ、誰だってお前見てりゃわかるけどなっ。」
オレから透を遠ざけながらもけらけらと笑う魚谷。
「まさか隠し通せてるとでも思っていたの?」
「むしろ知らんのなつめくらいじゃねぇの?」
もちろん人ごとだと笑う二人に、静かに青筋が浮かぶのがわかる。おまけにまわりのヤツらにまで「キョンの好きなヤツ知ってんよなぁ?」と聞き始める始末。
ヤツらの口からは当たり前のようになつめの名前が出てきていた。
そんな周知の事実なわけか!?
「夾くんはもともと優しいですけどなつめさんにだけは、特別優しいです!あと向ける笑顔が柔らかいんです!」
「余計なことを言ってんじゃねぇーよ!!」
「痛い痛い痛い痛い!!」
『あー、夾ちゃんが透くんいじめてる!!』
「……っ!!」
ピタリと止まる腕。その隙に魚谷が透を引っ張るも、俺の身体は動かない。
『何やってんの?』
「キョンが事実を突かれて、激しく抵抗してんだよ。」
笑いを堪えながら伝える魚谷が、これほど恨めしいと思ったことはない。側にやってくるなつめが、じっとオレを見上げるから、思わずぷいっと視線をそらす。
普段と違ってまわりの視線が気になった。
今まで気にすることなかったそれが、何故か生温かいものに感じられてムズムズする。
「だぁああ!!!うっぜぇんだよ!!」
『何?ご乱心?』
「なんで肝心のお前が気づいてないんだよ!!」
『何?何のこと?』
こいすてう
(わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか)
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