『ねえ、大丈夫?』
「……ッたりめぇだ。」
そんなに寝相が悪かっただろうか。
階段で寝ていたおれはたった今、甲板へ寝転んでいた。軽い痛みがあるところから、階段から落ちたのは明らかだった。
そして、それを運悪くこいつに見られちまった。
『いきなり落ちるからびっくり。』
「お前は何してんだ、ここで。」
他の奴らは町に出た。おれが船番としてサニー号に残っている。それなのにそいつは階段に座り、そこからおれを見下ろしていた。
『特に見たいものなんてないし。船番がちゃんと船番してるかどうか、船番を番してた。』
くくっとイタズラに笑みを浮かべるこいつは、どうやらおれをからかうのが好きらしい。
「寝てるヤツ見てても、面白くねえだろ。」
『うーん、ゾロだから大丈夫。』
「………。」
大丈夫ってなんだ?
たったそれだけの言葉が気になってしまう。
『ゾロってよく寝るよねぇ。夜寝れるの?』
聞いておきながらも立ち上がり、キッチンへ向かう。答えなんて求めてないのか、そのまま戻ってはこない。
よく見るとあいつの座っていた場所は、おれが寝るまで座っていた場所の近く…。おれがここに転げ落ちるまで、座っていたはずの場所の隣だった。
「……わざわざ隣に座ってたのかよ。」
この広いサニー号で、何故ここに座っていたのか。考えれば考えるほど、自然と笑みがこぼれる。
「あぁーー…っ。めんどくせぇ。」
簡単にぐらつく気持ちに青い空を見やる。
『何やってんの?こっち来てお茶でもしようよ。』
視線を下ろすときょとんとした空色が、おれを再び見下ろした。
「誰のせいでこうなってると思ってんだよ…。」
『…え、あたしじゃないでしょ?』
みちのくの
(しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに)
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