05


 








『あたしは…』


「弱ぇことは悪いことじゃねぇ!!」

『……っ…』



両肩を掴まれ、真っ直ぐなグレイの瞳を見上げる。


「誰がおまえが弱ぇから不安だっつったよ!?おまえに護られてる俺らがいるように、俺たちだっておまえを護りてぇだけだ!!理解れよっ!!」

『でも…っ、あたし何も出来ない。魔力が…、もうないんだよ!もう誰も護れない!!』



グレイの胸を力なく叩くハル。悲痛な叫びにグレイは黙って彼女を抱き締めた。




「おまえはもう十分やったよ。エルザに治癒魔法、使ったらしいな…。六魔将軍とやり合った後にそんな無理させたくなかったんだけどな…。」

『……ごめん』


「おまえが弱った時は俺が…俺らが護ってやるよ。」







<オレがおまえを護ってやる>







「だから安心して休め…」









<だからおまえは安心して誰かを護ればいい>










『…ラ……ス…っ』

「ハル?」


気を失うハルはいつものように穏やかな表情で眠る。グレイはだらっともたれ掛かる少女を抱えるが、うかない表情でハルの寝顔を見つめた。






「ねぇ…これってハルがニルヴァーナの影響を受けてたってこと!?」

「……そうなるな」

「でなきゃハルがおれたちを襲うわけないだろ!」


アイスがむっとしてルーシィを見上げると、彼女は思わず苦笑する。

「あんた本当にハルのこと好きなのねぇ」

「……あたりまえじゃんか…っ」


ぶっきらぼうに答えるアイスはそっぽを向いたが、ルーシィは笑いながらぽんっと頭を撫でた。







































<……ハル…っ!>





『エル…ザ?』


頭の中に響く声にゆっくり瞼をあげる。辺りは真っ暗で光など一切照らされていない場所。




<無事だったか!!>


『エルザ…、どこ?』



不安げなハルの声にふっと笑うエルザは、今の状況の説明を始める。


<ハルの周りにナツたちはいるか?>

『……いる…』

僅かな臭いを感知し近くにナツやグレイ、ルーシィ、ハッピー、そしてアイスがいることに気付きほっとした。



<動ける者で…>

『大丈夫。全部聞こえてた…ヒビキの声も。』

<ふっ…そうか>


安心したように笑うエルザの声にハルは眉をさげつつ笑みを浮かべる。





『ナツやグレイ、ルーシィ、ハッピー、アイスも…みんな聞こえてる』


「……あぁ…っ」

「大丈夫…」

「…意識が戻ったんだな、ハル」



それぞれの居場所がわからないハルは、何とか笑ってみせるが、急を要する事態にエルザからの指示が飛ぶ。


「オレが1!」

「俺は2だ!」

「あたしは3ね」

「わたしは4に行こう」

「私は5に行く」

「なら俺は…」

『………』



途中で遮られるように途絶えた声にハルは眉をしかめた。聞き覚えのある声に拳を握りしめる。


『エルザの側に…』

次の瞬間、念話が途絶え近くにいないと思われるエルザの声が聞こえなくなった。



「…とにかく6人いるみたいだ。」

「ハル、おまえは…」

『アイス…、連れてってほしい場所がある』

「……ハル?」


うつむいたまま告げられた言葉に、不審に思いながらアイスはエーラを出す。

「おれはまだ平気だ、どこへでも連れてってやる!」

「アイス!ハルに無茶さすんじゃねぇ!!」

『ごめん…。アイス!』



名前を呼ぶと浮かぶ体。背中にいつもの温かさを感じアイスのものだと分かる。ナツたちの声を聞きながら、アイスはあっという間にその場から飛び立った。










 



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