03


 








『な…、ナツ…っ』

「……っ…!ハル!?」


傷だらけのハルはふらふらと不安定に川の中を歩く。目を見開いたナツが慌てて駆け寄ると、ハルはそのまま彼の腕に倒れ込んだ。



「六魔将軍(オラシオンセイス)にやられたのか!?」

『……っ…』

「ハル…っな!?」


動き出す足元にハルを抱えながらバランスを崩す。イカダの上に乗ったと気づくとあっという間に酔うナツは口許を抑えながらも、ハルからだけは手を離さない。



「うぷっ…ハル」

『……離せよ』

「な…っ!?」


突然殴られたナツは思わぬ出来事に目を見開く。抱えていたはずのハルは不敵な笑みを浮かべながら、倒れこむナツを見下ろしていた。



『ナツ・ドラグニル、火の滅竜魔道士。…へぇ、あんたがねぇ。まあいいや、死んでもらうよ?』

ナツの頭上に現れる白い魔法陣。水の槍が身動きが取れないナツを狙う。


『じゃあね、ナツ…』

「……っ…」
























『水竜の槍戟!!』


いくつもの水の槍がイカダに立っていたハルを襲う。舌打ちをしながらそれを避けると、イカダから地へ足をつけた。



「なんでハルが!?」

『…あたしがナツを襲うわけない』

「どういうことだ?」


ヒビキやルーシィは眉をしかめて川の向こうに立つハルを見る。向かい側に立つハルはむっとしながら手をかざした。



『邪魔するな』

かざした先に現れた魔法陣から飛び出すのは勢いのある流水。ヒビキたちの前へ出たハルがさっと右手を払うと、川の水が壁のように飛び上がりヒビキたちを護る。


『あたしの姿、勝手に使うな。同じカッコしてたら同じ強さだとか思ったら大間違いだよ?』

『ふぅーん、そんな使い方もあるんだぁ!勉強になった!』

睨みつけるハルに対して、にっと笑う挑発的なハル。パニックになるルーシィを横目に、ハルはシャルルに言った。



『ウェンディ連れて逃げて。気絶してる人まで護れる自信ない!』

「わかったわ!」

素直に飛び立つシャルルにホッとするハルだが、向かい側に立つハルは素早く水で出来た弓を造り出す。



『水ってなんでも出来るのねぇ』

『……やめろ!』



『……っ…』


再び右手を薙ぎはらうハルによって、手にしていた弓が一瞬にして凍りつく。



『偽者なんかに負けない…』





「もういいゾ。水竜の相手はワタシがする。」


その声にぽんっと音を立てて二匹の人形へと姿を変えたハル。人形たちは声の主のもとへ集う。



「ピーリピーリ」

「ワタシはエンジェル。そこの女と同じ星霊魔道士だゾ。」

『……あたしの相手があんた?』

「不満?」


むっとするハルにニッと笑うエンジェル。




『……ルーシィ。』

「えっ?」


突然呼び止められたルーシィは目の前に立つ少女の背中を見る。ゆっくり振り向くハルは、情けなさそうに笑った。




『頼んでいいかな…?』

「………え!?」

『ごめん…っ』


「ハルさん!?」



突然歩き出すハルに堪らずヒビキも声をかけるが、彼女は振り返ることなく森の中に消えていった。











 



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