▼ 04
『あたしあっち行きたい〜』
「おまえはひとりで歩き回るな…」
「おれは騒がしいナツとハッピーのとこ行ってくる」
高級ホテルの地下にあるカジノ。白いドレスを着たハルは、面白くなさそうにグレイの隣で伏せる。
『ルールわかんないもん。グレイ勝ってるの?負けてるの?』
「勝ってんだよ!」
「グレイ様…」
声をかけられ顔をあげると、青いドレスを着た女が恥ずかしがりながら二人の隣に立っていた。
「……おまえはファントムの」
『ファントム…っ』
途端鋭く意識を向けるハルに女はぐっと息を飲む。ただ静かに睨むハルを慌ててグレイが制したのだった。
『へぇ!ジュビアって水の魔導士なんだぁ!あたしもなんだ!なんか親近感湧くねぇ』
「……ハルさんはとても人懐っこい方なんですね」
オレンジジュースを飲みながらけらけらと笑い話すハルに、初対面であるジュビアは苦笑する。
「ガジルくんと戦った水竜(ウンディーネ)は冷たく凍えるような魔導士だった、とみなさんが言っていたので驚きました」
『あー、あのときはね。けどファントムなくなっちゃったんだね!フェアリーテイルなら大歓迎だよ!ね、グレイ?』
「あぁ…、おまえがそう言うなら誰も拒んだりしねぇさ」
ハルは嬉しそうにジュビアの服を軽く引っ張ると、嬉しそうに続けた。
『今度ね、ファンタジアっていうマグノリアの収穫祭があるの!でね、フェアリーテイルが大パレードするんだけど、あたしたち3人で組もうよっ』
「お、いいな!」
「ハルさん、ジュ…ジュビアはまだフェアリーテイルの魔導士じゃ…」
『あたしのことはハルって呼んで?楽しみだねっ』
全くジュビアの話を聞かないハルだったが、その明るさに思わずジュビアも笑みを浮かべる。
しかし
「フェアリーテイルのグレイ、水竜(ウンディーネ)だな?」
「『……?』」
振り向くとほぼ同時に攻撃を仕掛けられる。間一髪で避けるハルだが、ジュビアは呻き声をあげ横たわっていた。
「ジュビア!」
『あんた誰!?』
目の前に立ちふさがるのは頭にターバンを巻いた巨体の男。鋭く見上げていれば、男は一言問う。
「エルザはどこだ」
「『……っ…』」
目を見開く両者の前にジュビアが立ちはだかる。
「ジュビアがお相手します!お二人とも、エルザさんのもとへ…。危険が迫っています」
「そう、みたいだな」
『…エルザに何の用?』
「教える筋合いはない」
にらみ合う二人だったが、突然大男がこめかみを押さえた。どうやら仲間からの通信で、エルザを見つけたらしい。
『好きにはさせない!』
「…終わらせる」
『な…っ』
辺りが一瞬にして真っ暗になったかと思えば、目の前にあったはずの気配が消える。
「口ほどにもないな、水竜よ…」
『……っ!!』
―――ドサッ
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