03


 






「お嬢ちゃん、どこ行くの?」

『え?…アイス、買いに行くの』


きょとんとしながら答えるハルに、彼らは一層にやにやと笑う。『じゃあ…』と彼らを横切ろうとすれば、容易に掴まれた細い腕。



『………』

普通の人間相手に魔法は使えないため、黙って彼らを見上げた。相手は金持ちなのか、身体中にじゃらじゃらとした貴金属を身に付けている。


「君、可愛いねぇ」

「ひとりでいても寂しいでしょ?一緒に遊ばない?」

『いや…だから、あたしはアイスを』

「アイスぐらいオレらが買ってあげるよ」

『ほんと!?』


途端目を輝かせたハルに、男たちはもはやでれでれだ。




『あ、でもあたしだけ買ってもらったらエルザたちに怒られちゃうかも…』

「エルザ?エルザたちって女友達?」

『友達…。家族だよ!』


ふわりと笑いながら答えれば、男たちはへらへらしながら言う。



「家族なら特別だ!」

「エルザちゃんたちにもアイス買ってあげるよ」





「マジかよ」

「「「……っ…!?」」」

突然肩を掴まれた男たちが何かと思い振り返ると、青筋を浮かべながら笑う男の姿。


「俺らにも買ってくれるんだってなァ?」

「「「ひっ…」」」

『………グレイ』



鬼のような形相のグレイに男たちは慌てて逃げていく。


『………』

「………」

お互い見つめあうわけでもなく、ただ向き合っているだけ。その場に耐えられなくなったハルが踵を返すと歩き始めた。







『………』

「………」



『………………』

「………………」




『なんでついてくるの?』


振り向けばずっと後ろをついてきているグレイと目が合った。それも一瞬で慌てたグレイによってそらされる。



『……っ…』

「悪かった!」






『…へ?』


突然の謝罪に目をまるくする。グレイの目はゆっくりとハルを捉えた。久しぶりにしっかりと合う視線。



「もう、使わねぇ。ハルの前からいなくなるようなこと、しねぇから…。約束だろ?」

『なにが…"約束だろ"よっ!破ろうとしたのはグレイじゃんか!!』

「な…っ、だから謝ってんだろうが!!」





『死んだら謝れないんだよ!!』

「………ハル」


目に涙を溜めるハルはそれを流さぬように上を向く。グレイは彼女へと歩み寄り、優しく抱きしめた。



「俺は生きてんだから謝れる。悪かった」

『……っ…。怒る気なんてなかったのにぃ…グレイが、また目ぇそらすからぁ!!』

「ああ。悪かった」


『ずっとあたしのこと、避けてたでしょー』

「悪かった」


『あの人たちアイス買ってくれるって言ってたのに、グレイが来たから…』

「…それは謝らねぇよ?」













「仲直りしたみたいね!」

「世話が焼けるな」

「グレイのやつ、いつまで抱きしめてんだよ!!」

「仕方がないよ。"抱きしめやすい体型"なんだもん」

「…………」


遠目から二人を見届けるルーシィたち。ぎゃあぎゃあと騒ぐナツを宥めるハッピーとアイスも安心したように二人を見ていた。








 



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