06


 







『な…ナツ』

「大丈夫なのか?」


何も言えずただうなずくだけのハルに、眉間にシワを寄せたナツが彼女の前に立つ。



「こっち見ろよ」

『……な、なに?』

「見ろって!!」

『…っ……』


ゆっくりナツを見上げると、その瞬間頭をわしゃわしゃっと撫で回した。



「平気みたいだな!」

『……ナツ』

「ガジルはオレがぶっ飛ばしといたから大丈夫だ!」


『ご…ごめん、なさい』



ナツを見上げたままの彼女の瞳を溢れ出す涙。初めて見る一筋の涙に目を見開くナツは、彼女を隠すようにぎゅっと抱きしめた。


「ななな、なんで謝るんだよ!?」

『みんなに…ナツにはもう、…あんな思いしてほしくなくて……。なのに…あたし…っ、みんなの前で無様にやられて……、心配かけて…。ギルドの、仲間のために…何も出来なかった。だから…っ、……ナツ?』


力の入る腕に言葉を止めナツを見上げようとするも、隠すようにハルの首もとへと顔を埋める。

『………ナツ?』

「…いいんだよっ」

『……え?』

「生きてんだから、それでいいんだ!!」



ナツの服をぎゅっと掴むと、ハルはやっと静かに笑みを浮かべた。


『うん…。ありがと、ナツ…』









「でぇきてるぅう!!」

「『……っ…!?』」


はっとした二人はばっと離れると辺りに目をやる。仲間たちはにやにやと笑い、アイスは不満げにむっとしていた。



「にやにやしてんじゃねぇよ!!」

「おい、ナツ!顔が真っ赤だぞ〜?」

「自分からやっといて何照れてんだァ?」


案の定からかわれるナツはぎゃあぎゃあと炎を吐きながら暴れだす。



『……みんなもごめんね。何も出来なくて』

照れるナツとは違い、申し訳なさそうに苦笑するハルに仲間たちはきょとんとし、一瞬でどっと笑いがあがった。


『?』

「さすがハルだ!」

「意識してるのはナツだけみたいだね」

「ドンマイ、ナツ!」

けらけらと笑う仲間たちに目をまるくしていたハルだが、楽しそうなその雰囲気にふわりと笑う。


『…よかった』



その笑みに不安そうにしていたエルザも目を細め笑った。



























































『いなくならない…って、約束…したのにっ』

「………」


ひとつの墓の前で座り込むハルの後ろに立つナツ。ハルは涙は流さずとも我慢するかのように唇を噛み締める。



『あたしが…、あのとき一緒に行っておけばっ。あたしが…、あたしが……っ』

「言うなよ…、そんなこと…」

『だって…。一緒に行こうって…誘われてたのに…っ、熱で倒れるなんて…馬鹿だっ!あたし…。』


「大丈夫だ!!」

『……!?』



力強い声にゆっくり顔を上げれば、上げきる前に頭をわしゃわしゃっと撫でられる。


「オレは絶対いなくならねぇ!リサーナの分までオレが…、オレとグレイが一緒にいてやる!」

『……っ…』

にっと笑うナツにじんっと胸が熱くなった。



『(あたしは…、いつも回りに頼ってばっかり。ナツだってつらいのに…っ、縛りつけてるのはあたしだ。強く…もっと強くならなきゃ…っ、みんなを護れるくらい強く!)』





少女が決意した日









 



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