04


 





足音に顔をあげれば、頭にアイスを乗せたハルが冷たい表情で二人を見つめていた。


「ハル…

『さっきの魔力』

……っ…」



グレイの声を遮るハルは一ミリも視線をそらさない。


『グレイの魔力が上がってた。…何する気だったの?』

「………」

「えと…、ハル!あのな…っ」

『ナツは黙ってて』

「………」

『……答えて』




―――ゴゴゴォオ


「「……っ…!?」」

『………』



突然大きく揺れ始める遺跡。ナツが壊し傾いていたはずが、元に戻ってしまったようだ。








「お取り込み中失礼!」

そう言って現れたのはリオンの手下のひとり・ザルティ。月が出始めるから元に戻したと説明するザルティに、ナツがぎゃあぎゃあ文句を言う。


「さて、儀式を始めますか」



そんなナツを放って走っていくザルティに、黙っているはずもないナツは叫びながら追いかけていく。


「こっちはおまえに任せる!負けたままだと名折れだろ!?」

「……っ、ああ」

「勘違いするなよ、おまえのじゃない!」

「「フェアリーテイルのだ!!」」



声を揃える二人にハルは黙ってナツと一緒にザルティを追った。









































「……ハル、もう」

『まだ…大丈夫』


言葉とは裏腹にすごい汗を流しながらうつむくハルをアイスが心配そうに見上げる。



「(あたりまえだ…。SS級を終わらせ帰ってきた直後に、このS級クエスト。治癒魔法も使ったこの体で…。ここまでよく持った方だな…)」

『……早く、上に行かなきゃ…』

「お、おい…」

『……っ…』




―――ドサッ































「水竜(ウンディーネ)…か」

「……っ…!?」


倒れたハルを庇うように前へ出るアイス。近づいてくるのは先ほどまで自分たちが追いかけていたザルティだった。



「どうやら意識がないようですね…」

「ハルに近づくな!!」

「まあまあ…。やけに忠実な猫ですねぇ、でもそういうのを身の程知らずとも言うんですよ?」


左頬を腫らしたザルティはにっと笑いながら勢いよくアイスを掴むと、壁に向かってぶつけるように投げる。



―――ゴッ


「……っ…!?」


「火竜(サラマンダー)に続いて水竜(ウンディーネ)とも手合わせ出来るなんて…、今日はついてますね……っ!?」




伸ばすザルティの手を掴むのは、意識を失っていたはずのハル。ゆっくり顔をあげる彼女はわずかに笑っており、ザルティは眉をしかめた。


『手合わせって…意識がある人同士が、やるものだよ?』

「な…っ!?」



ハルがふわりと笑ったと同時に放たれた魔力により、ザルティの掴まれた左腕は肩まであっという間に凍ってしまう。


「……何故…!?」

『………』



目を見開くザルティにやはり微笑むハルは、何も言わず大きく息を吸い込んだ。


『水竜の…』

「……っ…!?」

『…咆哮!!』



渦巻く流水のブレスにザルティは壁へと叩きつけられる。ハルはそれを見届けたあと、再びそのまま意識を失ってしまった。









 



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