06











「ん…」

そんな彼らを見つめるのは、レクターを抱えたスティング。


「おめーの面見てるとイライラすんだよ!」

「ガジルくん!?」


汗汗とガジルを宥めるジュビア。ハルがスティングを見やれば、彼は気まずそうに目を伏せた。



「あ…いや、なんでナツさんが出てないのかと思って…。」

『……?』


何も答えないグレイたち。ハルも黙ったまま、座り込むスティングへと歩み寄る。びくっと肩をすくめる彼は、うつむきがちに口を開いた。



「…っ、ご…ごめんなさ…。」

『なんで謝るの?』

「……お嬢のせいで、ハルさんにひどいケガを…。」


ひどく申し訳なさそうに言うスティングに、ハルはその場にしゃがみ込む。

驚いて反射的に顔をあげれば、目の前にはずっと憧れてきた相手の笑顔。



『お互い様だよ、スティング!』

「…ハルさんっ。」


『"弱小ギルド"って言ったことも、今回は水に流してあげる!』



笑顔の裏に見え隠れする黒い部分に、スティングの背筋がぞっと凍りつく。


「あ、あれは…。」

『晴れて"最強ギルド"に返り咲いたわけだし、なんてことないよ。』



「「(根に持ってるっ!!)」」


口元をひくつかせるスティングとレクターに、ハルはただにこりとほほえんだ。

















やっと終結した大魔闘演武。しかし、疲れ果てた魔導士たちは中央広場へと収集される。


国王、トーマ・E・フィオーレによって。



「……という訳で大魔闘演武の余韻にひたるヒマも無く、大変心苦しいのだが、今…この国は存亡の危機にある……とさっき聞いた。」


国王の言葉に、皆驚きを隠せないでいる。



「一万のドラゴン…ですと?」

マカロフが聞き返すように言葉を発した。


「アクノロギア一頭でもまるで歯がたたなかったのに…。」

「あれは特別だとしても…。」

「…一万ってのはねぇ。」

エバーグリーン、リサーナ、カナが口々に不安を漏らす。他のみんなも想像がつかないほどの数に、言葉を失っていた。



「城では現在作戦の準備が進められている。それがエクリプスキャノンだ。我々の目的は全てのドラゴンを一掃する事。」

『…その作戦のせいでルーシィが捕らえられたってこと?』


国王はただ困惑しているようで、眉を寄せたまま続けた。



「しかし、相手は大群ゆえ、必ず数頭…あるいは数百頭かが生き残ると推測される。魔導士ギルドの皆さん…、どうか私たちに力を貸してください。生き残ったドラゴンを、皆さんの力で倒してほしい。この通りです!この国を救ってください!」


一国の王でありながらも、頭を下げる国王の姿に、誰が首を振るであろうか。

わっと声をあげる魔導士たちに、国王は涙ながらに感謝の意を告げる。



「ありがとう…カポ。」

うっかり出てしまった彼の口癖に、唖然とする一同。


ハルは身体に巻いていた包帯を外すと、ぐっと伸びをして身体の調子を確かめる。

傷も魔力も、十分な休息のおかげでまるで好調だ。




『よしっ!』


気合を入れた彼女は、ラクサスに歩み寄るとすっと小さな手をかざす。



「何を…、……っ!?」


魔法で傷を癒す少女の行動に気づき、慌ててそれを制するも、ハルはむっと眉を寄せた。



「聞いてたのか!?今からドラゴンと闘わねえといけねェんだぞ!?」

「それでもない、ハルは数少ない滅竜魔導士なんですから!」


ラクサスと始終見ていたジュビアの声に、なんだなんだと騒がしくなる。



「そうですよ!ハルさん!」

「俺たちの出番なんです!」


スティングとローグも、彼女に治癒魔法を使わせることには反対だった。大きな戦力であるハルの魔力を、ドラゴンが来る前に、あまり消費したくないのが本音である。




『でも治さなきゃ、戦えないでしょ。』

「しかし…っ。」


『みんなで頑張るの!!』



エルザの言葉を遮りながら、声を張り上げるハル。その言葉に目を見開く魔導士たち。


『あたしだって頑張る。けど、みんな一緒なの!それで、みんなで…みんなで生き残って宴だよ!!』

宴会、パーティーが楽しみなのか、とても嬉しそうに話す少女。あまりに一方的な言い分に、思わず唖然とするも、彼女らしい選択に自然と表情は和らいだのだった。






みんなで一緒に











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