05










もうすでにぼろぼろの5人と対峙するスティング。


「壮観だな。7年前はあんたら全員尊敬してたんだぜ。」

余裕の表情で彼らを見渡す。フェアリーテイルの5人は、すでに立っているのがやっとだ。


「おしゃべりはいい。これが最後の戦いだ。」

「一対一でやってやる。誰を選ぶ?」

ガジルとグレイの言葉にも、彼は全員まとめてで構わないと答えた。



魔力を高めるスティングに、グレイたちはただ彼を見据えるだけ。







『……スティング。』


ぽつりと彼の名を呼ぶハルを、アイスは振り返る。様子のおかしい彼女に、声をかけようとするも、その瞬間、会場がざわっとざわついた。





「勝て…ない、…降参だ。」


5人の前に膝をつきうなだれるスティング。思いも寄らない終結に戸惑う観客も、最強ギルドに返り咲いたフェアリーテイルに、徐々に歓喜の声をあげた。



『………。』







「スティング、何故向かって来なかった。」

「会えない気が…した。」


震えるスティングは、ぐっと地を握りしめながら答えた。



「勝てば会えると思ってたのに…、なぜか…会えない気がしたんだ…。自分でもわからない、アンタたちがまぶしすぎて……、今のオレじゃ…会えない……って…。」


そんな彼に優しく微笑むエルザは、ただ一言告げる。



「会えるさ。」





「エルちゃーん!」


手を振りながら駆け寄って来るのはミリアーナ。そして、彼女の腕の中には、小さな茶色のエクシードがいた。




「…っ、レクター!!!!」


ふらつく足で立ち上がり、泣きながら駆け寄るスティングの声に、眠っていたレクターもゆっくりまぶたをあげる。



視界に捉えた彼の姿に、レクターもまた涙しながら名前を呼んだ。


「スティング君!!スティング君!!!」

「レクター!!」



泣きながら抱き合う両者に、ハルはほっとしたように微笑むと、勢いよく応援席から飛び出した。



















「おっ、と……!」


背中への衝撃と同時に、首元へと回る細い腕。それが誰のものなのか、確認せずとも理解したラクサスは、呆れたように微笑んだ。



「わざわざこんなとこまで来やがって…。休んでろっつっただろォが。」

『…もう十分休んだもん。』


ハルの向かった場所は、彼らの決着がついた場所。ぎゅうっときつくなる腕の力に、頭を掻くとその腕を優しくはずす。



「頭は冷えたかよ…。」

『…みんな、傷だらけだよ。……あたしより…っ。』


うつむく少女の表情は見えない。ただ黙ったまま、彼女の言葉の続きを待った。



「ハル…。」

「…おまえのケガは、もう大丈夫なのか?」

ジュビアとエルザの声に、一度だけ大きくこくんとうなずく。


「ギヒッ…。しぶとい奴だな。」

言葉とは裏腹に、嬉しそうなガジルの声。徐々に震える肩に気づいた彼らは、ハルの様子を伺うように少し屈んだ態勢となる。



その途端にあげられる顔。





『お疲れさまっ!みんな!!』


目に涙を浮かべながらも、ふわりと彼女特有の笑顔を向けるハル。驚くように目をまるくしながらも、思わずつられて綻ぶ表情。



『無茶ばっかりすんのは…どっちだよ、バカ。』


傷だらけのグレイを見上げ、眉を下げながらも笑みを浮かべる。



「あのなァ、無傷で勝つなんて…」

『無理だよねぇ?グレイには。』

「んだとォ!?」


けらけらと笑うハルを見て、呆れたようにため息をつくグレイは、ゆっくり口角をあげた。

ぽんっと頭に手を置くと、きょとんと首をかしげるハル。



「おまえのやられた分まで、俺たちでやり返してやったぞ!」

『……グレイ。』


その言葉ひとつに綻ぶ表情。満面の笑みを浮かべる少女に、他の仲間たちもわっと声をあげて喜んだ。
















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