▼ 04
「ハル。」
ラクサスに言われたとおり、医務室で休息をとっているハルのもとへ、リサーナが顔を出す。
目元を擦りながら起き上がる少女が『どうしたの?』と問えば、彼女は言いづらそうに告げた。
「ルーシィが、王国兵に捕まっちゃったみたいなの。」
『ルーシィが?…なんで?』
「なんとかっていう計画の関係者として捕まっちゃったみたい…。この大会で優勝しないと、ルーシィは戻って来れないって…っ。」
「あたしもよく状況が掴めてないんだけど…。」と頭を抱えるリサーナに、ハルは構わずベッドを下りる。
「ハル!?」
『あたし、ルーシィを助けに行ってくる!』
「待って!相手は王国よ!?今までの相手とは違うの!!」
今にも飛び出しそうな少女を、何とか止めるリサーナ。ハルは小さな拳を握りしめると、その場に立ち尽くす。
相手は王国とは言えど、仲間を捕らえた敵。黙ってなどいられない。
『やっぱりあたし、行かなきゃ…っ。』
「その必要はない。」
その声に振り返れば、そこに立つのはジェラールだった。
『どーゆうこと。』
「もうマスターの指示でナツたちが動いてるの。」
『ナツって…、試合は!?』
思いも寄らない人選に、驚く少女に、リサーナは落ち着くよう答える。
「グレイとエルザとガジル、ジュビアとラクサスが出てるわ。」
「王国へはナツとウェンディ、ミラジェーンとエクシード3匹が向かっている。」
『…そっか。』
「ハルのことだ…。こうして止めに来なければ、ルーシィを助けに飛び出していくだろうと思ってはいたが…。」
「…はぁ。」とため息をつくジェラール。まるで本当の兄のような二人に、リサーナはくすっと微笑みながら言った。
「あたしたちは王国兵に怪しまれないように、応援するしかないの。」
『…じぃじはなんて?』
「ハルが勝手に動こうとするだろうから、応援席まで連れて来いって言われてるわ。」
そう言ってほほ笑むリサーナに、ハルは何も言えない。すべて行動はお見通しということだ。
ジェラールまで止めに来ている今、少女に逃げ場はない。
『わかった…、おとなしくラクサスたちの応援しとく。』
少しむすっとしたハルの様子に、二人の表情はふっと和らぐ。単純な彼女の反応に、こんな時だというのに思わず笑みがこぼれた。
『…あたしも出たかったなぁ。』
「まだ言ってんのか?」
応援席でぼーっと画面を眺めながらも、ぽつりとこぼれる少女の本音。膝に座るアイスは飽きれたようにため息をつく。
「ハルってばどれだけ出たかったのかしら。」
「まぁ、それがハルだよ。」
同じくため息をつくリサーナに、レビィが苦笑しながらも答えた。
そんな仲間の視線に気づきもせず、ふと彼の言葉を思い出す。
"黙って見てろっ!!"
そう告げた彼は、今まさにジュビアと共に、リオン・シェリアを倒したところだった。
息の合ったチームプレイに、さすがの兄弟子も敵わなかったようす。
『……傷だらけじゃんか。』
他のメンバーも次々と他のギルドを倒していく。
ガジルがローグを、エルザがミネルバを、そしてラクサスがジュラを。
ついに残ったのはフェアリーテイルの5人と、セイバートゥースのスティングのみとなった。
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