03








「…っ!!守る守るって言ってるけどなぁ、守ることと自己犠牲は違うんだぜ!」

グレイの言葉に思わずカッとなる。


『あたしがいつ自分を犠牲にしたの!?』

「いつもだろーが!!」

『あたしはグレイみたいに無茶はしない!!』

「おまえだって人には無理すんな、とか言っときながら、いつも自分は無理ばっかしてんじゃねぇか!!」


沈静化されてきていたはずの感情も、再びぐっと膨れ上がる。



「やめろ、二人ともっ!」

「ハルも安静にしとかなきゃダメでしょ?」

「もうこの話は終わりよ。」

エルザ、リサーナ、ミラが二人の間に止めに入るが、二人とも納得がいっていない。


「…今は休め。」

ラクサスは一言そう言うと、踵を返し医務室を出て行った。



『………。』


黙り込む少女に、グレイは聞こえるように舌打ちをする。



「黙って見てろっ!!」

続いて出て行くグレイに、ハルは眉をよせた。


何とも言えない雰囲気の悪さに、全員言葉を発することが出来ない。



『…ちょっと頭冷やす。一人にしてくれるかな。』


いつになく沈んだ声色に、誰も何も言うことが出来ず、ただ黙ったまま部屋を後にした。







「…ハル。」

『アイス…っ。』


ぎゅうっと抱きしめるその細い腕は、わずかに震えている。それに気づいていながらも、アイスは何も言わない。



『あたし…間違ってるのかな?』

「……。」

『自分を犠牲にしたいわけじゃない…。ただ、みんなに傷ついてほしくないだけなのに…、それも…間違ってるのかな。』


涙を流すことはない。ただぽつりぽつりと呟くハルの言葉を、アイスは静かに受け止める。

ごろんと寝転がる小さな身体には、未だ多少の傷が残っている。



『これくらいの傷…どうってことないのに。』

「おれは…もう少し、ラクサスやグレイたちの気持ち…考えるべきだと思う。」

『……。』

「ラクサスも言ってたろ?ハルが感じるのと同じように、みんなもおまえが傷つくことが苦しいんだよ。」


その言葉に黙りこむハル。少女の腕から這い出るアイスは、じっと彼女の様子をうかがう。



『………うん。』

短く放たれた声に、嬉しそうに微笑むアイス。


「早く謝るべきだと思うよ。」

『でも今は休めって言われてるし…。』

「相変わらず、変なとこで真面目だな。」



思わず吹き出すアイスに、小首をかしげるも、彼らの言葉が彼女の胸に影を作り出していた。











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