▼ 03
「ここは私に任せろ!」
魔法剣を取り出したエルザが手下たちへと向き合う。
「行け、グレイ。リオンとの決着を着けてこい!」
「大丈夫!あたしたちもいるから、行って!」
「あいっ!」
自信げに言い放つルーシィやハッピー。ハルも笑みを浮かべると、同じように手下へと向き合った。
『いってらっしゃい』
「…ああ」
―――ダッ
駆け出すグレイを見送ると、ハルは笑みを失う。
「どうした?」
『……ん、早く終わらせる』
アイスの問いに答えることなく、敵を見ると深く息を吸い込んだ。
『水竜の……咆哮!!』
口から放たれる流水が竜巻のように手下たちを吹き飛ばす。
「す、すごい…っ」
思わず見とれるルーシィに構わず、ハルとエルザは次々と敵を倒していった。
『こんな雑魚…、エルザ!』
「どうした!?」
『任せていいかな?』
「………」
動きを止めたハルはエルザを見やる。真っ直ぐな意思を持つ目に、静かに微笑みうなずいた。
『ごめん…っ!アイス!!最高速度!!』
「ん!」
アイスに掴まりあっという間に遺跡へと行ってしまうハルを、ルーシィはきょとんと見つめ続ける。
「どうしたの?ルーシィ」
「今…、ハルが…」
「うん?」
唖然とするルーシィは信じられないとでも言うように目をまるくしていた。
「今、ハルが…"雑魚"って」
「うん?」
「嘘よ!あんな可愛いハルがそんな言葉口にするはずないわぁ!!」
ルーシィがぎゃあぎゃあ騒ぎ始めるが、ムチを振り回し敵を倒していることにはかわりないため、エルザもハッピーも何も言わず見守った。
「死ぬ覚悟は出来ている…、十年前からなっ!!」
「やれよ、貴様に死ぬ勇気はない!あるはずがない!」
「……残念だ…」
「グレイ!!」
十年前グレイとリオンの師であるウルと同じ構えをするグレイ。彼の名を叫ぶナツはその魔法を使えば、術者がどうなるか察知していた。
「(ナツ、エルザ、フェアリーテイルのみんな…、そしてハル…っ!後は頼んだぜ…、悪いが俺はいかせてもらう!!これで終わりだ!!)」
グレイが纏う魔力が上がる。
「絶対氷結(アイスド…)」
―――ゴッ
「……っ…!!?」
直前に殴られたグレイはぽかんと座り込む。殴った本人ナツも荒い呼吸を繰り返していた。
「ナツ!!」
「勝手に出てきて責任だなんだってうるせぇんだよ!人の獲物とるんじゃねぇ!!」
「え…獲物?あいつとの決着をつけさせてくれって言っただろうが!」
「はい了解、なんて言ったかァ?」
結局いつもの言い争いを始めるが、今のグレイはいつもより気が立っていた。ナツの胸ぐらを掴むと、ぐっと引き上げ言い放つ。
「あいつとの決着は俺がつけなきゃならねぇ!こっちは死ぬ覚悟もできてんだ…っ」
―――ガッ
瞬間グレイの腕を掴むナツは、いつになく苛立った鋭い視線で睨み付けていた。
「死ぬことが決着かよ…。逃げてんじゃねぇぞ、こらァ!!」
「……くっ…」
―――コツ……ジャリ…
「………なんでここに?」
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