▼ 05
『…水の中で水竜に勝てると思ってんの?』
にっと笑うハルの身体を、水が覆い勢いはなくなる。
「……っ。」
瞬時に懐へと入り込むハルにミネルバの反応は遅れた。
『水竜の翼撃!!』
勢いよく襲いくる流水にミネルバの身体は自由が効かない。その衝撃に耐えたはずが、もう身体は動かなくなっていた。
「…どうゆうことだ。」
『この競技で、あんたの勝ちはない!』
目を細めるミネルバと、身体の自由が効かない彼女を平然と見下ろすハル。
思いもしなかった戦況に会場は唖然とする。剣咬の虎のミネルバが、こうも簡単に抑えられてしまっているのだから。
「水の中でハルに勝てるわけねえだろうが!」
「ハルは水竜だぜ!?」
勝利を確信したナツとグレイはお互いハイタッチを交わす。
「御嬢…!?」
「……水竜。」
スティングとローグも、観戦者たちと同じように驚きが隠せない。
「水竜(ウンディーネ)…、私覚えてる!」
「7年前最強と言われていたギルド、妖精の尻尾でも有数の強力な魔導士!!」
「水竜の滅竜魔導士のハルだ!!」
ざわめく会場にマカロフやメイビスは、どや顔で満足げに聞きいる。
「甘くみておったわ。」
『今さら気づいても遅いよ。このまま場外にぶっ飛ばしてやる!』
身動きの取れないミネルバへと手をかざす。
「そういえば、そなたの相棒はあの藍色の子猫か?」
『……っ!?』
「甘いのう…。」
―――ゴッ
アイスの姿を確認するため視線を移すハル。隙を見せたハルの腹部にミネルバの拳が入った。
「「ハル!!?」」
小さな身体がくの字に折れ曲がる。グレイとナツの声も今の少女には届かない。
「子猫が心配か?妾にかかればここからでもやれること、覚えておくがよい。」
『……っ。』
頭を掴みハルの動きを封じる。アイスの姿を確認することすら出来ない。不安と恐怖にかたかたと震え出す身体。ミネルバは声をあげて笑った。
「脆い…脆いのう!そなたは仲間がおらねば何も出来はしない!」
『…あい、すっ』
「水竜だから等と期待されて来たようだが、そなたの身体は今にも潰れてしまいそうではないか。」
圧迫し続けられる頭部。ハルはその腕を震える腕でつかむだけだった。
残虐の始まり
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