▼ 04
「ね、ねぇ?」
『ん〜?』
ルーシィを癒すハルは小首をかしげながら応える。彼女はとても言いづらそうに、視線をきょろきょろと動かしていた。
「…ら、ラクサスとは…話さないでいいのかしら?」
『…………………』
いつになく長い沈黙。ルーシィはやってしまったと慌てふためく。
「い、いや!特に深い意味はないのよ!?リサーナがさっき話してたみたいだしっ、ハルがラクサスと話してるのまだ見てないなって…」
『…ラクサスは今ここにいるけど、もうフェアリーテイルには…帰ってこない……。』
「そ、そんなこと…っ」
「そんなことないと思うわよ?」
ルーシィの肩を叩いて微笑むのは、先ほど治癒が終わったミラジェーン。ハルは栗色の瞳をまるくして彼女を見上げた。
「それにラクサスが帰って来るか来ないかなんて、関係ないでしょ?誰も破門になった人間と話しちゃいけないなんて、言ってないわ。」
『…ミラ』
くすりと笑う彼女にハルはむすっと顔をそらす。素直になれない少女に、目の前の二人は思わず微笑む。
「さっきウェンディが挨拶に行ってたわよ?どうしてハルが声をかけないの?助けてもらったんでしょう?」
『……そ、そうだけど。』
「助けてもらっておいて挨拶もなしだなんて、人としてそれでいいのかしらね?」
棘のある言い方に目を向ければ、彼女は絶やすことなく笑みを浮かべていた。
『だ、だって…また、すぐいなくなっちゃうから……会ったら、別れるとき…、また泣いちゃうよ…』
「……ハル…」
初めて聞く少女の想いに、ルーシィは内容の割に正直わくわくしている。ルーシィにとってはどうしても、ハルのラクサスに対する想いが、"恋"に感じられてならないのだった。
「あ、そういえば…ラクサスも怪我だらけだったわね。」
「…あっ!」
ミラジェーンの言葉に思わず声をあげるルーシィ。ハルはびくっと身体を揺らし固くなる。
「行ってきてあげて?ウェンディはまだ初対面なんだから、貴女が行くべきよ。」
「そうそう!あたしはもう平気だから!ありがとねっ!」
『………。』
うまくまとめられた気がしてならない少女は、『二人して…。』と呟きながら、彼がいるであろう森の中へと入っていった。
「あの、ミラさん?」
「何?」
小さな少女の背を優しく見守るミラジェーンに、いてもたってもいられないルーシィがそわそわしながら声をかける。
「やっぱりハルとラクサスは何かあるんですよねっ?」
「んー…どうなのかしら?」
「…えっ?」
ミラジェーンのはっきりしない返答に思わず目をまるくした。どういうことなのか尋ねれば、彼女は首をかしげながら微笑む。
「私も詳しくは知らないの。けどハルが小さい頃から、ラクサスを慕っていたのは確かよ。」
「小さい頃から…」
「ラクサスの後ろをちょこちょこついていってたわ。」
くすくすと笑うミラジェーン。彼女の言葉にも想像出来てしまう。普段のハルを思い出し、空を仰いだ。
「…ハルらしいわね。」
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