04











「ね、ねぇ?」

『ん〜?』


ルーシィを癒すハルは小首をかしげながら応える。彼女はとても言いづらそうに、視線をきょろきょろと動かしていた。



「…ら、ラクサスとは…話さないでいいのかしら?」

『…………………』


いつになく長い沈黙。ルーシィはやってしまったと慌てふためく。

「い、いや!特に深い意味はないのよ!?リサーナがさっき話してたみたいだしっ、ハルがラクサスと話してるのまだ見てないなって…」



『…ラクサスは今ここにいるけど、もうフェアリーテイルには…帰ってこない……。』

「そ、そんなこと…っ」

「そんなことないと思うわよ?」


ルーシィの肩を叩いて微笑むのは、先ほど治癒が終わったミラジェーン。ハルは栗色の瞳をまるくして彼女を見上げた。

「それにラクサスが帰って来るか来ないかなんて、関係ないでしょ?誰も破門になった人間と話しちゃいけないなんて、言ってないわ。」

『…ミラ』


くすりと笑う彼女にハルはむすっと顔をそらす。素直になれない少女に、目の前の二人は思わず微笑む。



「さっきウェンディが挨拶に行ってたわよ?どうしてハルが声をかけないの?助けてもらったんでしょう?」

『……そ、そうだけど。』

「助けてもらっておいて挨拶もなしだなんて、人としてそれでいいのかしらね?」

棘のある言い方に目を向ければ、彼女は絶やすことなく笑みを浮かべていた。


『だ、だって…また、すぐいなくなっちゃうから……会ったら、別れるとき…、また泣いちゃうよ…』

「……ハル…」

初めて聞く少女の想いに、ルーシィは内容の割に正直わくわくしている。ルーシィにとってはどうしても、ハルのラクサスに対する想いが、"恋"に感じられてならないのだった。




「あ、そういえば…ラクサスも怪我だらけだったわね。」

「…あっ!」

ミラジェーンの言葉に思わず声をあげるルーシィ。ハルはびくっと身体を揺らし固くなる。


「行ってきてあげて?ウェンディはまだ初対面なんだから、貴女が行くべきよ。」

「そうそう!あたしはもう平気だから!ありがとねっ!」

『………。』

うまくまとめられた気がしてならない少女は、『二人して…。』と呟きながら、彼がいるであろう森の中へと入っていった。








「あの、ミラさん?」

「何?」

小さな少女の背を優しく見守るミラジェーンに、いてもたってもいられないルーシィがそわそわしながら声をかける。


「やっぱりハルとラクサスは何かあるんですよねっ?」

「んー…どうなのかしら?」

「…えっ?」

ミラジェーンのはっきりしない返答に思わず目をまるくした。どういうことなのか尋ねれば、彼女は首をかしげながら微笑む。



「私も詳しくは知らないの。けどハルが小さい頃から、ラクサスを慕っていたのは確かよ。」

「小さい頃から…」

「ラクサスの後ろをちょこちょこついていってたわ。」


くすくすと笑うミラジェーン。彼女の言葉にも想像出来てしまう。普段のハルを思い出し、空を仰いだ。

「…ハルらしいわね。」










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