▼ 04
「誰かに…伝えなきゃ!ハルが…っ!」
目に涙を浮かべながら木々の間を飛んで行く。アイスはMAXスピードでベースキャンプへと急いでいた。
あの後、ウェンディが駆けつけた。すぐにナツも目を覚ましたけど、ハルのことは言えなかった。
言えば彼はすぐにハルを助けに行ってくれただろう。
けどそれではハルが何も言わずに行った意味がない。
「他の…、まだ傷ついていない仲間を探さねぇと…っ!」
思い浮かぶ心強い仲間の顔。
「エルザ…、グレイ…っ、……なんでこんなときにあいつはいねぇんだよ…っ!」
ぐっと噛みしめるアイスは悔しそうに呟いた。
「侵入者だ!!」
「フェアリーテイルの魔導士だ!」
『そっちが先に侵入してきたんでしょ!!』
両腕を薙ぎ払い次々と敵を倒していく。グリモアハートの兵は絶えることなく現れるが、ハルにとっては相手にならない。
『水竜の煌氷!!』
地に手をつくハル一瞬にして凍りつく足場。足元から凍りついていく兵たちの悲鳴をよそに、ハルは一際目立つ巨大な扉を蹴り開けた。
『…はぁ…はぁ……。あんたがプレヒト…』
「残念だが私の名はハデス。グリモアハートのマスターだ。」
どしりと椅子に座り込む白髭の男は、単身で乗り込んできたのが少女だと知り嘲笑する。
「貴様ひとりで乗り込んでくるなど…身の程を知れ。」
『あんたこそ…フェアリーテイルに喧嘩売るなんて、身のほど知りなよ…っ!』
ゆっくり立ち上がるハデスにハルは素早く身構える。
「残るはブルーノート、ウルティア…ラスティノーズとアズマか……。小僧の兵隊もなかなかやるな。」
『……兵隊…?あんたほんとにフェアリーテイルのマスターだったの!?』
きっと鋭く睨みつけるハルに対し、ハデスは余裕の表情で答えた。
「フェアリーテイルは変わったんだよ、3代目となって…。」
『はっ…、あんたのときのフェアリーテイルじゃなくてよかったよ!』
「ふん…私も小娘のような軟弱な兵、願いさげだ!!」
闇雲に飛び出すハルににやりと笑う。
「まだまだ温いわ!」
『水竜の翼撃!!』
―――ゴゴォオオォ
爆音を響かせる中、ハデスの魔法の鎖がハルの足首を捕らえた。
『ちっ…!』
勢いよく地へ叩きつけられるところへ、ハルは大きく息を吸う。
『水竜の咆哮!!』
ブレスの勢いで重力と衝撃に反発する小さな身体。鎖を掴むと今度はハルがにやりと笑った。
『水竜の煌氷!!』
―――ピキピキッ
鎖を足場に一瞬にして凍りつくハデスの身体。それでもハルの攻撃の手は止まらない。
『ぶっ飛ばしてやる…っ!!』
「まだまだ小童が…!」
振りかぶられた細い右腕は、氷の中から飛び出してきた腕に掴まれる 。再び捕まったハルだが、引くことなく左の拳を繰り出した。
『…っ、許さない!!』
容易に避けられる拳。しかしその瞬間、掴まれていた右腕は自由となった。
ひんやりとしてきた辺りにハデスがピクリと眉を動かした。見れば彼を囲むようにして浮かぶ何百もの氷の槍。
『水竜の槍戟!!』
ハデスに向けて一直線に飛んでくる氷の槍。まだハデスのそばにいたハルは再び大きく息を吸い込む。
『水竜の咆哮!!』
―――ドゴォオオォオ…
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