05





パラパラと落ちてくる木屑。あまりの衝撃に綺麗だったこの部屋も、あっという間にぼろぼろとなっていた。



『…はぁ…はぁ……』


大きく肩で息をするハル。
徐々に晴れていく爆煙の中、しっかりと両足で立つ姿が見えてきた。

『……っ』

「小娘にしてはなかなかやるな…。しかし私には勝てんよ。」


服こそは破れぼろぼろにも関わらず、ハデス自身には大きな外傷は見られない。



『(……これが、…2代目マスター……プレヒトのちから…)』

ぐっと拳を握りしめるハルは、ふっと大きく息を吐いた。彼女のまとう魔力の変わりように、ハデスは面白がるようににやりと笑う。


「まだ魔力が上がるのか、小娘!マカロフも大した兵を育てたもんだ!!」

『じいじは……』

上空に現れる巨大な魔法陣。両手を突き出し、静かに言葉を紡いでいく。



『じいじは…あたしたちを、一度たりとも兵隊だなんて言ったことなんてない!あたしたちは…家族だって…っ!血なんか繋がってなくても……、ギルドは家族だって教えてくれた!!!』

「戯言を…」

『じいじを…、あたしの家族を傷つけたあんたたちを……っ、あたしは許さない!!!』


部屋中を覆う白い魔法陣へ、ハルは両手を突き上げた。



『滅竜奥義…蒼氷桜乱舞!!』

「………なんだ?」

魔法陣から降り注ぐ雪の結晶。それだけかと鼻で笑うハデス。




―――ピキピキッ


「何だ…と!?」

その結晶に触れた部位があっという間に凍りつく。しかも今回は先ほどのように魔力を込め割ろうと試みるも、左肘の関節ごとびくとも動かない。



「……っ、小娘が!!」

めいいっぱいに魔力を放出し、降り注ぐ結晶を弾き返すも、左腕は完全に凍りつき、使い物にならなくなっていた。


『……だ、だめか…っ』



―――ドサッ


その場に倒れこむハル。絶好のチャンスにも関わらず、彼女は立ち上がることはない。



否、立ち上がれないのだった。


『……はぁ…っ』

結晶が降り止むころには、彼女の身体はほぼ凍りついていた。かろうじて息をしているところをみると、どうやら呼吸器官はやられていないようだ。



「自己を犠牲にする奥義か…。その勇気だけは、買ってやろう。」

『……はぁ…ぅ、うっせえ…』


悔しげに握りしめられる拳。ぐっと噛みしめられる口元。

「…私の代で小娘がおったなら、いい相手になっていたかもしれんな。」



『………っ、…ぅ……』

振り上げられた拳。視界に捕まえてわかっていても、もう少女には避けることすら出来なくなっていた。







羽根の取れた水竜










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