06
『二人とも息はあるから…大丈夫みたい』
「…うん…、よかった」
二人の介抱を始めるナミを横目に、ハルはピクリと反応する。さっと立ち上がると素早く仲間や、ガンフォールの前に立ちふさがった。
『…なんか用?』
「「なんか用…じゃなーい!おれたちは副神兵長!」」
「よくもサトリの兄貴を〜!」
「よくも兄貴を〜!」
いつの間にか甲板に立つのは二人の神兵。丸い体で軽快に飛び跳ねながらハルを見下ろす。
苛立ったナミもハルの側に立つが、ハルが前へはいかせない。
「何よ、あんたたち!兄貴なんて知らないわよ!」
「「ほっほほっほほ〜!!」」
「知らないわよ、じゃなーい!おれの名はホトリ!」
「おれの名はコトリ!」
「「三つ子の兄がおまえらにやられたのだ!ほっほほーい」」
「知らない」の一点張りのナミにガンフォールはサトリが神官のひとりであることを教える。
「じゃあルフィが倒したっていう神官のこと?」
「「知ってるじゃないか〜!」」
『……黙れ』
「「…ひっ……」」
一瞬のうちに二人の目の前に移動したハルに、二人の副神兵長は息をのむ。怯む二人に容赦なくハルは回し蹴りを入れ、あっという間に彼らはミルキーロードへと落ちていった。
「な…、ハル…?どうしちゃったのよ……、あんた…っ」
『……なんかうざったかったからさ』
「うぬ…しかし、やつらも副神兵長。そう簡単には…」
「「やられんぞ〜!!」」
水を散らしながら飛び出してきたホトリとコトリ。ハルは目を細めて二人を見るだけ。
「おまえは後でじっくりやってやる!」
「先におまえとそこの女からだ!」
「老いぼれとてこやつらぐらいひとりでやれる…」
「私だって…たまには、(こいつらを)守ってみせる!」
にらみ合う四人にハルは自分の出る幕ではないと悟ると、サンジとウソップを運ぼうと二人の元へ歩み始めるが。
「「ほっほほ〜!」」
「こいつらがサトリの兄貴をやったんだ〜!」
「許さないぞ〜!」
「やめて!もう二人は意識もないのよ!?」
『……………』
目の前で蹴飛ばされる二人を見てハルのまとう雰囲気が冷たくなる。
『…は……てんの…』
「「何だって?」」
『……覚悟はできてんのかって聞いてんだよ…』
「「…あれ?」」
蹴り回していた二人を見失いもう一度ハルを見れば、足元に倒れるウソップとサンジ。
驚きを隠せない二人をキッとにらみつけるとその場を蹴った。甲板にバキッと音をたてて穴が開くが今のハルには聞こえない。
―――ゴッ
「コトリ!?」
後頭部を蹴られたコトリは森の太い幹へと一瞬でめり込む。
『何?あんたら心綱(マントラ)ってやつ使えないの?』
「つ…使えない!」
『……ふーん』
―――ボゴォオ
次の瞬間にはホトリもミルキーロードに向かって蹴り落とされていた。やがて地に落ちた衝撃音が聞こえるが、ハルはもうすでにイノセンスを解きサンジとウソップを運び始める。
「ね…ねぇ、ハル?」
『どうしたの?』
ナミの呼びかけに振り向く彼女はいつものハルで、空色の瞳をくりっとまるくし首をかしげていた。
仲間を想うがために
prev | next