07
「この嬢ちゃんが…、1億3000万?」
『…1億3000万?』
ベラミーたち同様手配書の存在を知らないハルは眉をしかめる。周りがざわざわ騒がしくなるなか、いらいらし始めた彼女は近くにあった酒瓶を掴み、手配書を手にした男へと投げつけた。
『てか先にこいつと話してたのあたしだから!すっこんでろ!!』
「ヒイィイイ…っ!!」
丁度頭の横を通りすぎた酒瓶に男は一気に縮こまる。
『…金塊返せ』
向き直るなりそれだけ告げるハルにベラミー一味はゲラゲラ笑った。しかし一味と言っても笑うのは一味の幹部だけ。他のやつらは賞金額を聞いた途端、静かになっていた。
「あの金塊はおれが奪ったもんだから、もうおれのもんだ!!」
『あの金塊は…っ、栗頭のおじさんが…命を懸けて手に入れたんだ!あんたなんかが手ェ出していいもんじゃ……』
「ベラミー!!!出てこぉい!!!」
『………』
ハルの言葉にかぶせるように聞こえた声は酒場の外からのもので、誰のものかわかっているハルはため息をつく。
「ご指名のようだな、どうする?嬢ちゃん。先に相手しとこォか?」
『……いい。とりあえず金塊返せ。』
当たり前のように言ってみせるハルにベラミーがゲラゲラと笑いながら酒場の外へと出ていった。先ほどの声の主、ルフィの相手をするために。
残されたハルはベラミーの後を追うサーキースの服を掴んだ。
「何だい、嬢ちゃん。」
『金塊は?』
「ハッ…ほしけりゃ力ずくで奪ってみな」
ハルを挑発するサーキースにまわりにいた者は慌てて声をかけるが、サーキースを含む幹部たちはゲラゲラ笑い続ける。
「サーキース、この女1億3000万だぞ!!」
「おまえの額の三倍だ!強ェに違い…」
「バカかおまえら!手配書なんて自分で作れんだよ!こんな嬢ちゃんが1億超えなわけねぇだろうがァ!!」
自信満々のサーキースに一味は徐々に納得し始める。ハルは辺りを見回しぱぁっと笑顔になった。視線の先には袋からはみ出した金塊。迷わず歩き出すハルをもちろんサーキースが止めに入る。
「ダメだぜ?こりゃおれたちのもんだ」
『……まだ言うの?』
巨大な刀身を取り出すサーキースを見てハルは重心を低くする。一触即発な雰囲気にまわりは息をのむが意図も簡単に決着はついた。
『……重…っ』
ずるずると金塊が入った袋を引きずるハルを幹部たちは唖然として見る。彼女の足元にはピクリとも動かなくなったサーキースの姿があった。
1億3000万のちから
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