06
四人は静かなホテルへ入った。まるでリゾートホテルのような場所に、不機嫌だったナミも笑顔に変わる。
「素敵ーっ!柄悪い街だけどこんなとこもあるのね!!」
『……すごい』
ふわっと表情を明るくするハルにゾロが静かに笑っていると、ホテルのオーナーらしき人物が寄ってきた。
「困ります…っ、現在当ホテルはベラミーご一行様の貸しきりとなっておりますので…っ」
「おい、どーしたァ!どこの馬の骨だ、そのこぎたねぇ奴らはァ」
「サーキース様!?」
『こいつがベラミー?』
「…サーキースって言っただろ」
ゾロがツッコむ中、サーキースはハルの前に立ちふさがり小さな彼女を見下ろす。
「さっさと出てけ、クソガキ」
『……ぶっ飛ばすよ?』
「やれやれー!!」
「「だめ…っ!!」」
むっとするハルはサーキースを見上げるが、小柄な彼女がいくら睨んでも彼はゲラゲラと笑った。
「おれをぶっ飛ばす?はっはっはっ!!おもしれぇやつらだ…」
サーキースは懐からバラバラとお金をばらまく。
「これで好きな服でも買うといい…」
「「……っ…」」
『………』
「いいのか?」
それを遠慮なく拾おうとするルフィを引っ張ってナミがホテルの敷地を出ていく。後に続くようにハルとゾロがついていった。
「サーキース、あんまりからかってやるなよ」
「なんだ、そこにいたのか」
サーキースの仲間たちの手にはルフィの手配書。
「あいつらも一生懸命ここまで旅してきてんだからよ」
「そりゃ、あんたやベラミーに比べりゃゴミだけどォ」
「並の海賊にしちゃよく頑張ってる方だ」
「だが……へぇ?今のへなちょこが…。こいつをベラミーに見せてやろう」
にやりと笑うサーキースの手にした手配書の金額は3000万ベリーのままだった。
そして酒屋では先ほどの出来事に腹をたてる#ナミ#の姿。店主にぐちぐちと文句をこぼしていた。
ナミのとなりではゾロとハルが黙って飲み物を飲み、ルフィの目の前にチェリーパイが出される。
『おじさん、おかわり…』
ジョッキを差し出すハルのとなりでルフィがチェリーパイにかぶりつく。
「「……っ…」」
―――ダンッ
「このチェリーパイ死ぬほど不味いな!!」
「このチェリーパイ死ぬほど上手いな!!」
真逆の感想をシンクロさせるルフィとそのとなりに座る大男。キッとにらみ合うと今度はジョッキに手を伸ばす。
そして
―――ダンッ
「このドリンクは格別にうめぇなァ!!」
「このドリンクは格別に不味いなァ!!」
再び反する二人の意見。
「てめぇ、舌おかしいんじゃねぇのか?」
「おまえ、頭おかしいんじゃねぇのか?」
「おれはべつにコックじゃねぇからいいんだがな…」
にらみ合う二人に店主は平然とそれを眺めていた。
お土産に持ち帰る肉とチェリーパイの数を争う二人に店主は呆れて何も言えなくなる。
「「おめぇやんのかこらァ!!!」」
「なんで喧嘩になってんだよ…っ!?」
『……そんなお金、今回は持ってきてないよ』
ドリンクを飲み干しながら言ってのけるハルを横目に、大男はにやりと笑って聞いた。
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