06
『……ねぇ』
「どうしたの?ハル」
『今からどこに行くの?』
まつげに乗ったナミを見上げるハルの言葉に一味は呆然とする。
「昨日寝る前言っただろ?」
「今は反乱軍の本拠地、カトレアに向かってるのよ」
苦笑しながらも答えてくれるビビを見上げながら、『へぇ…』と漏らすハルは足元の砂を軽く蹴った。
――ドサッ
背後で音を立てて座り込むのは麦わら帽子をかぶった船長。一味はどうしたと彼を見るが、その一言に困惑する羽目となった。
「やめた」
「ルフィさん…どういうこと?」
『………』
「こんなとこでおまえの気まぐれに付き合ってる暇はねぇんだよ、ほら早く立て!」
サンジの喝にも動じない。
「つまんねぇ」
「んだと、こらァ!?」
「おい、ビビ」
ルフィはまっすぐにビビを見つめて言った。
「おれはクロコダイルをブッ飛ばしてぇんだよ」
「……っ…」
「反乱軍を止めたらクロコダイルは止まるのか?おれたちはそこへ行ってもすることなんてねぇ、むしろいねぇほうがいいくらいだ。海賊だしな」
一味はそんな船長の言葉に息をつく。
『……確かに』
「たまに核心つきやがる…」
「ルフィのくせにな」
しかしビビの力は入ったままで、続くルフィの言葉を受け止めるのに精一杯だった。
「……それは…」
「おまえはこの戦いで誰も死ななきゃいいと思ってんだ……国のやつらもおれたちも。七武海相手に100万人も暴れだしてる闘いで……甘いんじゃねぇのか」
「……っ…」
ルフィの言葉にビビは唇を噛み締める。
「人が死ななきゃいいと思って何が悪いの!?」
「人は死ぬぞ」
「……っ!!」
次の瞬間ビビはルフィの頬を叩き、辺りには乾いた音が響いた。一味は黙って二人を見守っていたが…
「やめてよ!そんな言い方!今度言ったら許さないわ!それを止めようとしてるんじゃない…っ!反乱軍も国王軍も、国民は誰も悪くないのに!何故死ななきゃいけないの!?悪いのは全部クロコダイルなのに!!」
「ならなんでおまえは命賭けてんだ!」
ルフィの拳がビビの頬を殴った。さすがにそれを見たウソップとサンジは二人を止めに入るが、それを無視して二人の争いは続く。ビビはルフィに馬乗りになり平手打ちを繰り返す。
「この国を見てりゃ一番にやらなきゃいけねぇことぐらい、おれでもわかるぞ!おまえ一人の命一個で賭けたりるもんか!!」
「なら何を賭ければいいのよ…っ、これ以上私に賭けるものなんて…!」
ルフィがビビの手を掴み起き上がる。
「おれたちの命ぐらい一緒に賭けてみろ!仲間だろうが!!」
「っ!!」
次の瞬間ぼろぼろと流れ落ちる涙。彼女が一味と出会って初めて流した涙だった。
「出るじゃねぇか、涙」
「……ぅ…っ…」
フードで目元を隠すビビをナミが優しく抱きしめる。
「本当はおまえが一番悔しくてアイツをブッ飛ばしてぇんだ…、教えろよ…クロコダイルの居場所!」
ルフィが麦わら帽子をかぶる。ハルはビビの涙を黙って見ていた。慰めるわけでもなくただ静かにじっと…。
仲間の絆
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