05
「おい…」
『……』
辺りは真っ暗で空には星が輝いている。光のない砂漠では一層星が光って見えた。
「シカトしてんじゃねぇよ…」
『……』
依然として返事をしないハルにゾロは大きなため息をつくと、ドサッと荒々しく彼女のとなりに座る。
『……反乱軍は何のために死ぬの』
「…まだ、死んでねェ」
『……何のために死ぬ気になってんの』
「…国のためじゃねぇのか」
淡々とした口調の問いにゾロは空を見上げながら答える。そんな彼をとなりの少女は不思議そうに見つめた。
『……ビビもビビのお父さんも、国のために動いてるんじゃないの?』
「…反乱軍はクロコダイルに踊らされてんだよ」
『……それなら…』
それきり黙ったハルを不審に感じたゾロがとなりを見たときには、もう彼女の視線は空を向いていた。
『クロコダイルって、アラバスタのヒーローなんだよね?』
ぽつりと呟かれた疑問に「あぁ」と短く答えると、ハルはスッと立ち上がり空へと手を伸ばす。
『……あたし、アイツをヒーローだって認めたくない』
「……は?」
何を言い出すかときょとんと少女を見上げるゾロ。ハルも少し苦笑しながら続けた。
『…あたしはビビの仲間だからそう思っちゃうのかも知んないけど、クロコダイルがヒーローには到底見えないし見れない。』
「………」
『せっかくこの世界にはAKUMAなんていないのに…なんで人と人が争うんだよ』
空へと伸ばした手をぎゅっと握りしめると、となりに座っていたゾロも立ち上がる。
「AKUMAっつーのが何なのか知らねぇが、おまえは"正義の味方"なんだろ?おまえが自分で正義だと思うことを貫き通せ!」
『……そんなの…』
空色の瞳を細めてふわりと笑うハルにゾロは目を見開いた。
『海賊になってる時点で正義じゃないよね?』
冗談めかしに言いながら宿へと入っていく彼女の背を、驚いた表情で見つめるゾロの口は開きっぱなしで何とも間抜けだった。
「わ、笑った…」
数時間の仮眠の後、外へ出ると空はすっかり明るくなっていた。
「私たち…行くわ」
「あぁ…、ルフィくん!これを持っていきなさい」
トトがルフィへと手渡した小さな樽にはここでは貴重な水が入っていた。
「水じゃん!出たのか?」
「君が眠った直後にね…湿った地層から絞り出したんだ」
「よくわかんねぇけど、大切に飲むよ!」
ルフィの笑顔にトトも昨日とは違い温かな笑みを向ける。
『ルフィこそ…ヒーローみたいだ』
「なんだって?」
『……なんでもない』
聞き返すウソップにそう答え、先を歩き始めていたまつげに乗ったナミたちを追った。
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