03
「なんでハルが気失ってんのよ!?」
「ハルちゃん!?」
一味が合流したとき、ハルの意識がないことに騒ぎだすナミとサンジ。ゾロは何も答えることなく、ただ少女を背負って歩き続けていた。
「ちょっ…ゾロ!」
「ちっ…なんだ、アイツ」
心配そうに声をかけるナミも、悪態をつくサンジをも無視して歩くゾロは、ただただハルの言葉を思い返していた。
<……くい…な…っ、あの海兵だ…>
ハルは確実にくいなの顔を知っている。そして…
<スモーカー?けむりんか?会ったぞ!それがどうした?>
スモーカーがいたならばあの女剣士も側にいただろう。ハルはそいつを思い出してくいなだと思っているようだ。
「……なんでおまえが知ってんだよ」
ぼそっと呟いたそれは引きずられていたチョッパーの耳に届いたと同時に、砂の混じった風によりかき消されていった。
「なんだよ、この昼と夜の温度差は!」
「…砂漠の夜は氷点下まで下がるから」
「氷点下ァ!?」
辺りは真っ暗になりそんな中でも一味は歩き続けていた。ビビの話によればもうすぐ反乱軍の本拠地であるユバにたどり着くらしい。
「ハル寒くねぇかな?」
夜になって元気を取り戻したチョッパーはゾロのとなりを歩きながら、未だに目を覚まさないハルの心配をする。
「さぁな…、眠ってたらわかんねぇだろ」
「いや、それはゾロだけだよ」
『……ん…っ』
「ぅお…!?」
急に動き出したハルの両腕はゾロの首に巻きつき、二人の体はぎゅうっと密着する。
「起きたのか?」
「……いや」
どうやらあまりの温度差に寒さを感じとった@@ハルは、無意識のうちに近くにいるゾロにくっついてしまっているようす。
耳元から聞こえる安らかな寝息にゾロは思わずふっと笑みをこぼした。
「寝てりゃ可愛いのにな…」
そこへあまりの寒さにチョッパーを抱きしめるウソップがへらへらと笑いながらツッコむ。
「馬鹿野郎!ハルは起きてても可愛いぞ!ただ無愛想なだけだ!」
「………そうだな」
「「え…」」
思いもよらないゾロの反応にウソップとチョッパーはピタリと動きを止めた。
「アイツ………誰だ?」
「ぞ…ゾロなのか!?」
あたふたと慌て始める二人を無視してゾロは歩き続けた。
「あの光!」
「ユバだわ!」
ビビの指差す先を見ればわずかながらに確認できる光。「水ぅー!」と騒ぎだすルフィの声とは別に、何か地響きのような音がする。
「何の音だ?」
「見て!あれ…砂嵐!?」
たった今見つけたばかりの光、つまりユバが砂嵐に襲われていた。一味はどうすることもなくそれを見るしか出来ない。
「ここがユバ…?」
「エルマルと変わらねぇじゃねぇか…」
「オアシスじゃなかったのかよ、ビビちゃん!」
「砂で地層が上がったんだ…、オアシスが飲み込まれてる」
あまりの状況に一味は呆然とオアシスだったはずのユバを見渡す。そこへ……
「旅の人かね…、砂漠の旅は疲れただろう。すまんね。この町は少々枯れている……だがゆっくり休んでいくといい。宿ならいくらでもある……それがこの町の自慢だからな…」
現れたのは痩せ細った身体に、シャベルを手にした男性だった。
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