05
「「イヤーー!!?」」
悲鳴をあげる二人にビビが申し訳なさそうに、そして自らも慌てながら伝えた。
「言い忘れてたけど…サンドラ大トカゲは2匹一組で行動するの…!!」
『ビビ…言い忘れすぎだよ』
ビビのとなりでぽつりと呟いたハルは恐れる彼らの前に出た。体を覆う巻衣を脱ぐと踊り子の衣装を見て動きにくさに眉をしかめる。
『イノセンス発動…紅桜』
淡い光がハルを包んだかと思うと彼女は一気に地を蹴り、大トカゲの頭上へと飛び出した。
それからはあっという間でトカゲの頭に強烈な踵落としを入れた後、踊り子の衣装を舞わせながら岩場へと蹴り飛ばす。
―――ドゴォオオ…
「「「…………」」」
黙り込む3人のもとへ少女が戻ってきたときには、すでに淡い光は治まっており何食わぬ顔をして服を整えていた。
『ねぇ、あのトカゲ食べれるかな?』
巻衣を拾ったハルが顔をあげると、3人は何とも言えないような表情で小首をかしげる少女を見ていたのだった。
―――ジュウウウ
「おぉ、ここらの岩場は天然のフライパンだぜ」
トカゲを焼くサンジの後ろでルフィが連れてきたラクダについて話す一味。どうやらチョッパーとラクダは顔見知りのようだ。
「しかし砂漠にラクダとは丁度いいな!」
と、ウソップとルフィが乗ろうとすればラクダはそれを拒み、チョッパーの話によるとどうやら変態ラクダだということがわかった。
ナミはにこりと微笑みラクダのアゴを撫でる。
「いい子ねぇ、名前はなんて言うのかしら?」
「アホ」
「ボケ」
「タコ」
「じゃあマツゲで!」
「おい、それ一番変だぞ」
ゾロのツッコミも虚しくラクダの名前はマツゲと決まってしまった。ナミはハルとビビの側に寄り、困ったようにラクダの上から二人を見下ろす。
「どうしよう…さすがに3人は乗れないわね」
「わたしはいいわ。砂漠には慣れてるし…ハルさん、乗って?」
『……あたしは歩くよ。今は大丈夫だから。…けど疲れたら代わってもらっていいかな?』
へらっと笑うハルに二人は了承しマツゲにはナミとビビが乗ることになった。
「本当に大丈夫かい?ハルちゃん」
心配そうにとなりを歩くサンジに笑いかけながら、『大丈夫』と答え歩みを止めない。
『あたし教団の仕事で結構サバイバル経験豊富なんだよ』
「…教団の仕事?」
『言ってなかったっけ?あたし…』
「正義のヒーローなんだろ?」
『…え』
夜に近づき涼しくなってきたためか、元気を取り戻したルフィが嬉しそうに言う。ハルは苦笑しながら『まあ、そうなるのかな?』と話すが、サンジはハルの言葉を遮ったルフィに一蹴り入れていた。
『正義のヒーローみたいに…誰かを助けれてたらいいけどね』
彼女の言葉に一味はハルに目をやる。そっと耳元のピアスに手を添える彼女の表情は、寂しげに揺れていた。
ここじゃ見つからない
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