03
「エースの言ったとおりよ」
サンジが買ってきた踊り子の衣装を手渡すナミは真剣な表情で訴えた。
「今回はエースだったからまだいいとしても、黒髭の情報があるからって知らないやつについて行っちゃダメよ?」
『あたしそんな子供じゃないよ』
「あんたはそれくらいふわふわしてんのよ!!」
『……ふわふわ?』
衣装を受け取りながら小首をかしげるハルに呆れたナミは強く言い放つ。
「いい?あんたの仲間が他にいたとしても、あんたはあたしたちにとって大切な仲間なの!勝手にどこかに行こうとしたり一人で決めようとしたりしないで!」
『……は、い…』
あまりのナミの剣幕に呆然しながらも、団服を掴み意を決したハルはゆっくりとそれを脱いだ。
「もう…大切な人を失いたくないの」
『…ナミ?』
最後に小声で呟いたナミはそのまま部屋を出ていってしまった。
「ハルちゅわーんvおれの思ってた通りとーっても似合ってるよ!!」
『あ…ありがとう』
くねくねと踊りながら駆け寄ってきたサンジに苦笑しながら、きょろきょろと辺りを見回した。
少し離れた場所にナミとビビが真剣な表情で話しているのが見える。この先の航路について話しているようだ。
『………ん…』
久しぶりに太陽に触れる白い肌。ここの気候であの団服を着ていた方が不思議なくらいに照りつける。
『…っ?』
あまりの照りつけに目を細めると、バサッと頭から何かがかかった。振り向くと海賊なのに山賊のような格好をしたゾロが立っていた。
『…これ』
「かぶっとけ」
それだけ言って離れていくゾロの背中を見ながら、ハルは頭から被せられた布をぎゅうと握った。
「ここからユバへ向かうわよ!」
「何でだ?」
「ユバは反乱軍の拠点となってるの。だからリーダーに会って反乱を止めなきゃ」
『…………』
船を降り歩くも辺りは一面砂だらけで、ナノハナとは大分状況が違った。緑の町エルマルと呼ばれていた場所(ここ)は、緑一つない砂漠へと化してしまっている。
『……暑い』
砂避けのために着た巻衣をパタパタと引っ張りながら呟くハルに、ビビが苦笑しながら言う。
「冬島にいたハルさんには辛いかも知れないわね。定期的に水分補給しなくちゃ危険だから気をつけてね」
『…うん、ごめん…大丈夫』
ユバを目指して歩く一味。
暑さに耐えながらもだらだらと歩くルフィとウソップ、ずるずるとすでに伸びてしまったチョッパーを引きずりながら歩くゾロ。ナミとビビを気にかけながら歩くサンジは、ちらちらとハルを気にかけてくれているようだ。
「ハルちゃ…」
『あたしは大丈夫だから…』
サンジの言葉を遮り先を急ぐハルは、前方を歩いていたゾロへと並んだ。
「……………」
『……さっきは、……とう…』
「…あぁ?」
小さくなる声に暑さで苛立つゾロが荒々しく聞き返す。むっとしながらも小さく息をつくと遠慮がちに毬藻を見上げた。
『さっきは日除けの布…ありがとう……』
はっきりと聞こえた思いがけない感謝の言葉と、上目がちな空色の瞳と恥ずかしそうな表情に、思わず目をまるくするゾロ。
『暑いの…苦手みたいだから、助かった…』
「…そうか」
ぶっきらぼうな言い方の少女にふっと笑うと、フードを被った彼女の頭をがしがしと撫でた。その瞬間
「この変態毬藻〜っ!!」
「ぅおっ!?何しやがる!」
「ハルちゃんに気安くさわんじゃねぇ!てめぇにゃ前科があるんだぜ」
ハルはぎゃあぎゃあ騒ぎ始める二人を横目に、パタパタと扇ぎながら先を歩いた。
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