06
「相変わらず早いねェ。それも悪魔の実の力かね。」
『……何の用。』
先ほどまでハルがいた場所に立つのは、あの長い島にて、一味を追い詰めた大将…青キジ。突然現れた敵の最高戦力に、少しばかり動揺をみせる。
「用なんて平気であるってば。君が海賊で、おれが海軍である限りな。」
『…………捕まえにきたの?』
「今回は負けたよ。君らの勝ち。」
お手上げとでも言うように両手を上げる青キジに、ハルは訝しげに眉をひそめた。
『じゃあ、何しにきたの。』
「ははっ、正直だなァ。嬢ちゃんは。」
とんっと目の前に降り立つ敵。しかし全く敵意の見えない相手に、さすがのハルも少々戸惑う。
「ただ会いに来ただけよ。こないだは嫌ァな別れ方しちゃったもんで。」
『誰のせいだよ…。』
ハルの呟きに声をあげて笑う青キジ。
「大将を前にして、そんな平然とできる海賊はそういない。さすが嬢ちゃんだ。」
『それはあんただから。あとふたり大将いるんでしょ?そいつらの前じゃわかんない。』
「あいつらふたりに捕まるくらいなら、おれが今捕まえてやるよ。」
表情より本気とも冗談ともとれる発言に、再度距離をとる。あからさまな対応に、青キジは敵意がないことを伝えるが、思い出したかのように続けた。
「あんたらの船長のじーちゃんは、一応中将。英雄ガープが一海賊を逃したとあっちゃ、大変なことだからな。」
『……それってどーゆうこと。』
「簡単にゃ出航できないってこった。」
ナミの話では今回は捕まえない、そう言っていた。さすがのルフィでも実の祖父には歯が立たない様子で、やられっぱなしだったと聞く。
そして、何故その情報を青キジはハルへ伝えるのか。
『………大将なのにいいの?』
「"大将"だからいいのよ。」
『…勝手だけど。いつか後悔しないようにね。』
とんっと地を蹴り屋根に立つ少女。眩しそうに見上げる青キジへ向かって笑ってみせる。
『あの時捕まえておけばよかった…なんて思っても遅いんだから。』
そう言い残しあっという間にいなくなってしまう。仲間のもとへ向かったのだろう。
「…楽しみにしとくよ。」
最後まで挑発するような態度の少女に、青キジはふっと笑みを浮かべた。
遠いようで近い未来
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