03
「今回ばかりはそいつに賛同するよ、ハルちゃん。」
『サンジ…。』
思いもよらない言葉に眉を寄せる。ハルは納得がいかない、とでも言うように彼を見上げた。
「ナミさんだって言ったんだろう?おれらは君が心配だ。君がおれたちを心配してくれるように。」
煙を吐きながら笑うサンジに、ゾロはぷいっとそっぽを向く。
「君がおれたちを想ってくれてるのと同じように、おれたちも君のことを想ってるんだ。わかるかい?」
『……うん。けどあたし、強いよ?』
「知ってるよ。君が強くても弱くても、おれたちは同じように心配するよ。ハルちゃんはルフィの心配はしないのかい?」
サンジの問いかけに慌てて首を振った。そんな少女に笑みをこぼしながら、ハルの頭をぽんぽんっと撫でる。
「同じことさ。まあ、少しは違う情も入ってるけどね。」
「おいっ!何のことだ!」
「うるせえ!マリモ!!」
『………?』
途端いつものように言い争いを始めてしまうふたり。
置いてけぼりとなったハルだが、ふいに目の前がチカッと明るくなる。視界に浮かぶ光。自然と伸びる手。これだけは逆らえない。
ふたり以外誰もいない絶壁の岩礁。
痩せ細った子どもはサンジだろうか…。
共にいる男は同じく痩せ細り、彼の片脚は無かった。
食料は全て少年に渡し、彼の元にある袋に入っているのはここでは"ただの"財宝のみだった。
自らの足を食い生き延びた男…
彼がサンジの育ての親なのか。
この記憶の中には必ず彼がいる。
オールブルーを夢見るふたり。ハルにはそれがどれほどの価値なのかわからないが、笑顔で話すサンジを何度も見たことがある。
「オーナーゼフ!!!!」
土下座するサンジ。
後ろの小舟にはにっと笑うルフィたちもいる。
「クソお世話になりましたァ!!!!!」
サンジ…泣かないで。
手を伸ばしても触れることはない。
その手は何度も宙をきる。
『泣かないで…。』
「ハルちゃん?」
―――ぺた
ハルの手はサンジの頬へと触れる。目の前にあるのはあの時とは違い晴れた表情のサンジ。痩せこけてもない、ハルの知っているいつもの彼だ。
『……サンジ。』
「またいきなり倒れたんだよ。まだ完治しきってないんだろ、酷くやられたようだったから。」
頬に触れる手を、サンジはぎゅっと握り返す。その手の温かさにぐっと胸が熱くなる。
あの時、餓死寸前だった彼が、今ここにいるのはあの場所で共に遭難したのが彼(ゼフ)だったから。
『サンジがあの時いなくならなくてよかった…。会えてよかった。』
「ハルちゃん?」
小首を傾げるサンジをぐっと引き、細い腕で抱きしめる。
「めろりーーーーんvv」
もちろん呆気なくダウンするサンジに、もう動じることもないハルは、起き上がると現状を確認するためナミの元へ向かった。
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