05
「今、ここで…バスターコールをかければ、このエニエス・ロビーと一緒に…貴方たちも消し飛ぶわよ。」
「な…っ、何を馬鹿な!?味方の攻撃で消されてたまるか!!」
ロビンの言葉にスパンダムは焦りを露わにしながらも、膝をつく彼女を蔑む。
それでもロビンは顔をあげずに、訴え続けた。
「二十年前…私からすべてを奪い、大勢の人たちの人生を狂わせた…たった一度の攻撃、バスターコール。」
『……。』
「その攻撃が、やっと出会えた気を許せる仲間たちに向けられたっ!」
すくっと立ち上がるロビンは、まっすぐにルフィたちを見下ろす。彼らもまた、そらすことなく彼女を見上げていた。
「私が貴方たちといたいと望めば望むほど…っ、私の運命が貴方たちに牙を剥く!私には…海をどんなに進んでもっ、振り払えない巨大な敵がいる!!
私の敵は…、世界と…その闇だから!!
青雉の時も、今回のことも…、もう二度も貴方たちを巻き込んだ!
これが永遠に続けば、どんなに気のいい貴方たちだって…っ、いつか重荷に思う!!
いつか私を裏切って、捨てるに決まってるっ!!それが一番怖いの!!
だから助けになんて来てほしくなかった…っ。いつか落とす命なら…、私は今…ここで死にたい!!!」
初めて聞く彼女の本音。心からの叫びに、ハルは黙って目を伏せる。
「だぁーはっはっはっ!なるほどな!まさに正論だ!そりゃそうだ。おまえを抱えて邪魔だと思わねえ馬鹿はいねェよ!!」
『……。』
ぎりっと靴が地面と擦れる音。怒りに身体が疼いてたまらない。
「あのバッチを見ろ!海賊ども!!」
スパンダムの指差すのは、司法の塔の上部に位置する世界政府のバッチ。風に揺れるそれを自慢げに、声をあげる。
「あのマークは四つの海と、偉大なる航路にある、170カ国以上の加盟国の結束を示す物。これが世界だ!楯突くにはおまえらがどれほどちっぽけな存在だかわかったかァ?
この女がどれだけ巨大な組織に追われて来たか、わかったかァ!」
―――ピキッ
何やらヒビが入る音がするも、どこから発しているのかわからない。気にすることなくスパンダムはゲラゲラと声をあげて笑う。
じっとバッチを見上げるルフィは、唐突に口を開いた。
「ロビンの敵はよくわかった…、そげキング。」
「ん?」
「あの旗、撃ち抜け。」
「……了解。」
そげキングはルフィの言葉に迷うことなく巨大パチンコ・カブトを取り出す。
「必殺・ファイヤーバードスター!」
彼の放った攻撃は、逸れることなくバッチを射抜いた。ボッと一瞬で燃えるバッチに、驚愕するスパンダム。
「正気か!?貴様らァ!全世界を敵に回して、生きられると思うなよォ!?」
「のぞむところだァ!!!!!」
叫び声を響かせるルフィに、スパンダムは完全に怯え、思わずその場を後ずさる。
彼らの意思の強さに、ロビンは声も出ない。
「ロビン!!まだおまえの口から聞いてねェ!!」
「…っ。」
「生きたいと言え!!!!」
ルフィだけではない。彼女を見上げる仲間たち、側にはハルも呆れたように彼女を見守っていた。
今までそう願ってはダメだと、ずっと思っていた彼女にとって、彼の言葉は強く胸に突き刺さる。
ぽろぽろとこぼれる涙は、すでに彼女の意思を表していた。
<…ルフィを信じろ!!>
<もう、ロビンがいない航海なんて考えられないよっ。>
もし…
本当に、少しだけ…望みを言っていいのなら…
私は…っ
「生ぎだい!!!私も一緒に!!海へ連れてって!!!」
涙ながらのロビンの叫び。やっと聞くことができた彼女の本音に、仲間たちは笑みを浮かべる。
彼女の口から聞くことで、彼らの意思はまた一層強いものとなる。
『…やだって言っても、連れてくし。』
ぽつりと呟くハルだが、表情は心から嬉しそうに笑っていた。
本当の気持ち
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