04
「アクアラグナを越えて遥々…。考えたら凄いわね。」
「ふん。運だけは良さそうだな。」
「今度は殺しの許可がある。」
「手加減なしだと、楽じゃのう。」
バルコニーからルフィたちを見下ろすCP9のメンバー。余裕の表情を浮かべる彼らを、黙ったまま横目で見やった。
じゃらりと音を立てる鎖に、ため息をつく。
「だぁーはっはっ!このタコ海賊団!おまえらがいくら粋がったところで、結局何も変わらねえと思い知れ!!」
偉そうに声高々に言い放つスパンダム。
「この殺し屋集団CP9の強さ然り、人の力じゃ開かねェ正義の門の重み然り…。何より今のおれには、このゴールデン電伝虫を使い、バスターコールをかける権限がある!」
「…っ、バスターコール!?」
『……。』
ひどく動揺をみせるロビンにつけ込むように、スパンダムは妖しく微笑んだ。
「そうさ!ちょうど二十年前、貴様の故郷を消し去った力だ!ニコ・ロビン。」
『…消し去った?』
「オハラという文字は、翌年の地図から消えてたっけなァ?」
どういうことなのかまったく検討もつかないハルだが、ロビンの様子の変化に、それほど恐ろしい物なのだと感じ取る。
「やめて!それだけはっ!!」
「ん〜っ!いい反応だぜェ!ゾクゾクするっ!!」
スパンダムに懇願するロビン。それを弄ぶかのように笑う彼に、歯を噛みしめながら舌打ちをする。
「なんだァ?それはこのバスターコール発動スイッチを押せって意味か?えぇ?」
『んなこと言ってないだろ!』
「小娘は黙ってろ!」
思わず口を出る言葉に、スパンダムはツバを散らしながら訴えた。
「貴方…本当に分かってるの?それを押せば何が起こるか…っ!」
「分かるとも。海賊たちがこの島から出られる確率が0になるんだ!!このボタンひとつでなァ!実に簡単な話だァ。」
「そんな簡単なことじゃすまないわ!!」
必死に訴えるロビンに、スパンダムはいやらしい程に焦らし続ける。
『最低だな…こいつ。』
ぼそっと呟くハルの言葉に、ルッチの視線が少女を捉えた。それを気にすることなくスパンダムを睨みつけるも、彼は何もしてこない。
「何か思い出すことでもあるのかァ?なんなら、試しに押してみるか?今ここで。」
「何をするの!?やめなさい!!」
ロビンの言葉に、眉をしかめるスパンダム。
「生意気な口を聞くじゃねえか。アァン?」
「地図から…オハラが消えたって言ったわね。地図の上から、人間が確認できる!?貴方たちが世界をそんな目で見てるからっ、あんな…非道なことができるのよ!!」
『…ロビン。』
バルコニーの塀に立つスパンダムを、鋭い眼光で睨みつけるロビンは、何かを思い出しているのか、ひどく苦しげな表情をしていた。
ハルはフランキーの隣に立ち、じっと彼女を見つめている。
「バスターコールは目的さえ失う無情の力…っ。それだけは、使っちゃいけない…絶対。」
prev |
next