07
―――ズッ
そげキングの身体へとめり込む指。まるで銃に腹を撃たれたかのように、血を流すそげキング。
それでもふらふらとブルーノに向かって足を踏み出す。
「ロビンを…っ、は…な……っ!!?」
「指銃。」
再び腹を射抜かれるそげキングは、そのままその場に倒れこむ。
「ウソップ…!!」
サンジが顔面めがけて蹴りを決めるが、
「鉄塊。」
鉛のような硬さに、万全ではない状態の蹴りでは、効き目がみられない。
「力のない蹴りだ。」
足を掴まれたサンジは、ハルのように床へと叩きつけられた。
『やめろっ!!』
ブルーノに向かって走り出すハルに顔をあげれば、少女の周りには紅い玉が浮かんでいる。
「何だ…それは。」
「やめなさい!!」
ロビンの声にピタリと動きを止める。悲痛なほどに震えるその声は、聞いたことのないほどに弱々しいものだった。
『ロビン…っ。』
紅い玉はすぐに消滅し、ブルーノは眉をしかめる。
「…私は逃げたりしないわ。それで、いいはずよ。」
「向こうからかかってくるんだ。仕方ない。」
「じゃあ、早くここを離れましょう。」
踵を返すロビンにブルーノはゆっくり振り返る。
「残念だが、舞姫がまだ納得がいかないようだ。」
「…っ!」
『あたりまえだ!!』
繰り出される回し蹴りを、片手で抑えるブルーノ。すぐにもう一方の足で彼の顎を蹴り上げる。
「ぐ…っ!?」
『あたしは何も知らない!だからあんたたちに従う理由もない!』
「困った娘だ…。」
突然耳元に聞こえた声に、空色の瞳が見開かれる。次の瞬間には首に腕を回され、自由を奪われていた。
『…っ!?』
「行くぞ。」
コートを羽織り、肩には鳩を乗せたハットの男。平然とした表情に腕の強さがまったく比例していない。
『はな…っせ!』
「貴様はなるべく無傷で、との命令だ。あまり世話をかけさせるな。」
『…あたしは、行かない!行きたくない!!』
ハットの男に抱えられ、ブルーノの作り出した異空間へと入っていくハル。その後を伏し目がちに追うロビンの背中に、声が響いた。
「待てよ…っ!」
「……っ。」
『そげキング…!』
息絶え絶えに今にも倒れそうな声。それでもロビンは振り向くことなく立ちつくす。
「大丈夫だ…っ、ロビン!おまえ、大丈夫だぞ…!」
『……そ…』
「おまえ…まだ、なんか……隠してんな?」
その言葉にロビンはゆっくりと振り向いた。
「べつに…それはいいっ。ただし…海賊は船長の許可なく…っ、一味を抜けることは…出来ないっ!だから…っ、おまえ…ルフィを信じろ!!」
「……っ!?」
『………。』
激しく動揺をみせるロビンと、黙ったまま彼を見つめるハル。
『あっ!!』
「…ぶはぁ」
ブルーノに蹴り飛ばされ声をあげるそげキングに、ロビンはハッと目を覚ます。
何も言わずに歩き出すロビンに合わせて、ハットの男も歩みを進めた。
「待てよ、ロビンちゃん…っ!」
サンジの悲痛な声を聞きながら、ハルは自身の手にはめられている手錠を静かに見つめていた。
見えない傷痕
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