05
「うおっ…!?」
突然飛び込んできた少女に、避けることも、うまく受け止めることも出来ないまま、一緒に倒れこむサンジ。
両手の自由が効かないハルは、彼の胸の上でもがきながらも、彼らの無事に安堵する。
『サンジくん!無事だったんだな!』
「!?ハルちゅわ〜んvvそれはおれのセリフだよ〜んv」
依然として胸の上から覗き込むように見つめるハルに、相変わらずサンジはメロメロだ。
一気に緊張感の抜けてしまうサンジたち、近くに立つ男…フランキーが喝をいれる。
「そんな簡単に逃げれる相手かよ。車両が完全に離れるまで油断は出来ねえぞ!」
『………。』
サンジはハルを抱えながら何とか起き上がる。少女の視線に気づくと、そっと支えながら立ち上がった。
「ハルちゃん、言いたいことはわかるけど今は…。」
『……わかってる。』
ぐっと拳を握りしめる少女に、サンジは黙って頭を撫でた。
―――ミシッミシッ
突然の車両が軋む音。よく見れば棘のついたムチが車両に絡まっていた。
煙幕が晴れる中、そこに立っていたのはカリファと呼ばれる女。
「捕まえたわ。ブルーノ。」
「ああ。」
そのムチを掴むと一気に手前へ引き戻す。
あまりの勢いに、車両同士が激しくぶつかり合ってしまうほど。
「なんてパワーだ…っ!?」
三号車を素手で掴み連結させるブルーノと呼ばれる巨漢。あの時ハルを捕まえた男だ。
『こいつには借りがある…、あたしがやる。』
空色の瞳を細め、イノセンスを発動しようとするも、一本の腕がそれを制する。
「だめだ。」
『なんで!?』
「能力は使うな。」
思いも寄らないサンジの言葉に目をまるくする。
『それはあたしに戦うなってこと…?』
「今はまだその時じゃない。まだやつらはハルちゃんの能力が、悪魔の実によるものだと考えているはずだ。」
『……。』
彼の言葉に今にも飛び出しそうな身体にブレーキをかける。今飛び出してしまっては、ロビンが彼らに隠し通してくれた意味がなくなってしまうのだ。
「ここにいたのか舞姫…。海楼石の手錠をつけたまま逃走を図るなど、無駄なことを。」
『……あんた、誰。』
「ふん、まぁいい。麦わらの一味は殺すな。そういう約束だ。」
"約束"という言葉にぴくっと反応するハル。
「舞姫とフランキーは捕らえろ。」
『……。』
能力が使えないハルの代わりに飛び出すサンジは、ブルーノへ強烈な蹴り技を繰り出す。
まるで鉛のように身体を硬くするブルーノにも、サンジの重い蹴り技は効果がみられるよう。
しかし
「う…っ!?」
背後で聞こえたうめき声に振り向けば、ロビンの腕に拘束されたそげキングの姿。
「八輪咲き(オーチョフルール)…クラッチ!」
反り返る身体。拘束が外れると同時に、その場に倒れこむそげキング。
『ロビン!?』
「ちょっ…なんで!?ロビンちゃん!!」
「何度言わせるの!私のことは放っておいてっ!!」
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