04
「あんたはまた勝手に行動してっ!!!」
メリー号から響き渡るナミの怒号。
目の前に正座するのは、先ほどまで我を失い狂ったように戦っていたハルだ。
「あたしはウソップの所に先に行って、チョッパーが行くまで一緒にいてあげてって言っただけでしょ!!?」
『……う、うん。』
「わかってたなら何で一人でフランキー一家に殴り込みに行ってんのよっ!!」
ナミを何とか宥めようとするサンジだが、今の彼女には何も聞こえない。
「あんたまでやられたら、あたしたちが傷つくって思わなかったわけ!?」
『…やられるわけないじゃん。』
「お黙りっ!!!」
有無を言わせないナミの怒声に、しゅんと黙り込む。
ナミがぎゃあぎゃあと説教を続けていると、キッチンのドアが開きチョッパーが顔を出した。
「ウソップが目を覚ましたぞ!」
その言葉を聞いた瞬間、彼らの間に安堵の空気が流れ、足をキッチンへと進めて行く。
ナミも大きくため息をつくと、しゅんっと落ち込むハルを見下ろし、ふっと笑う。ぽんっと頭を撫でれば、少女はきょとんとナミの背を見つめていた。
「無事で良かったわ。」
『……ナミ。』
きょとんとする少女に微笑みかけるナミは、先ほどまですごい剣幕で怒っていた人物と同一だとは思えない。
仲間たちが次々とウソップの元へ向かう中、ハルは正座をしたまま、ふとその場にいない仲間のことを想う。
そして今から船長がウソップにするであろう大切な話を、受け止めきれるだろうかと、瞳を揺らしたのだった。
夕暮れに染まる海を見つめながら、翡翠色のピアスに手を伸ばす。久しぶりに触れたそれは、見えずともしっかりとそこにある。
『……だめだね、あたし。』
自らを嘲笑するハルは、腕に顔をうずめる。瞳を閉じれば外界からの光はない。彼女の耳には波の音だけが響きわたる。
『船長が決めたんだ…。みんなが我慢してるんだ。なのに…』
小さな声で呟かれる言葉。
『あたしが泣いてどうするだよぉ…っ!!』
ぐっと噛み締められる口元。目にはいっぱいの涙を溜めて、それを流さまいと懸命に眉を寄せている。
船首に手を添えながら、震える身体に耐えられず座り込んだ。
『……我慢しろ、あたし…っ。』
自分に言い聞かせるように、同じ言葉を繰り返す。今にもこぼれ落ちそうな雫も、流れ出ることはなかった。
prev |
next