03
『……。』
抵抗も出来ない巨大な身体を、何も言葉を発すること無く蹴り飛ばす。相手ももう気を失っているのか、声も漏れなくなっていた。
そんな彼らに対し、再び足を上げるハル。
「ハルちゃん…」
彼女の肩を掴み止めたのは、タバコを咥えたサンジだった。
『……、…いつからいたの。』
消えるような声に、サンジは「少し前だよ。」と答える。
ハルが気づかないうちに、サンジ、ルフィ、ゾロ、チョッパーも参戦していたのだ。仲間の涙を見て、彼らも黙っているはずがない。
『………。』
辺りを見回せば、もう立っているのはハルたち5人しかいない。"フランキーハウス"と呼ばれていたふざけた外観の家も、すっかり崩壊していた。
ウソップの応急処置は、チョッパーがたった今行っているようす。
「落ち着いたかい?」
のぞき込むように尋ねるサンジ。ハルは小さくこくりとうなずいた。
「盗られた2億はもうここにはないみたいだ。」
「フランキーってやつが持ってっちまったって言ってたな。」
続くゾロの言葉にぐっと拳を握りしめる。
考えて見れば、ウソップが一人でここへ乗り込んだのも、2億ベリーが盗まれた罪悪感からだろう。
いくらフランキー一家の連中をこうしてのしたとしても、それは自分自身が満足するだけ。仲間を傷つけた相手へやり返し、それで終わりだ。
しかし、ウソップは違う。
結局、2億ベリーが取り返せなければ、彼の気持ちに抑えは効かないのだ。
『あたし…追いかける。』
「無理だ。フランキーってやつが何処に向かっているのかも、今のおれらにはわからねえ。」
サンジの制しの言葉にも、首を横に振る。
『でも、あのお金を取り返さなきゃ…ウソップは責を背負っちゃうと思う。だから…あたしが…』
「おれだったら目を覚ましたときに、おれのせいでハルちゃんがそこにいないことの方が堪えられない。」
サンジの真っ直ぐな視線に、イノセンスの発動を解いた。安心したように微笑むと、彼女の頭を優しく撫でる。
「今はメリー号に一人残したナミさんが心配だ。ロビンちゃんのこともあるし、まずはメリー号へ戻ろう。」
『……ん。』
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