06
開始早々ボールマンであるサンジを襲うグロッキーモンスターズ。
『ねぇ…いいよね、使っても』
「……………ああ」
ハルの問いに仕方なくうなずくゾロ。子どものような彼女に、呆れたようすでがしがしと頭を掻きながらも、健気に許可を取ったところにどこか嬉しそうだ。
『イノセンス発動…紅桜』
途端紅い光をまとう少女に、初めてみるフォクシーたちは目を見開いた。
「なんだ!?」
「やっぱり舞姫ちゃんも能力者か?」
「けど何の!?」
ざわざわ騒ぐ外野に見向きもせず、ハルが地を蹴ればハンバーグの遥か頭上、ビッグパンの頭上まで飛び上がる。
「あっという間にあそこまで…っ」
『何すれば終わるんだっけ?』
ふわりと宙に浮くハルが考えているうちに、サンジがピクルスやハンバーグを無視してビッグパンへと飛びかかった。
「ボールマンであるこいつをあのリングへぶちこめばいいんだろ!…って!?」
ビッグパンの腕に足をつけたサンジはその足をつるっと滑らせる。
『サンジくん?』
「何やってんだ、アホコック!?」
その場で足を動かし懸命に走るサンジだが、一向に進まない。どうやらビッグパンの皮膚はぬるぬるした粘液により、上手く走れないようす。
「パンクパス!」
「なっ…」
ビッグパンから強力な張り手を受けて、サンジはあっという間に自陣へと戻ってくる。その落下地点に回るのは開始早々駆け出したハンバーグとピクルス。
ゾロが負けじと走り込むが、ピクルスのタックルによって倒れ込んでしまう。
『………そういうのは、アリなんだ』
感心するハルは二人を心配することもなく、ビッグパンを見下ろした。
『ならすぐ終わらすのはもったいないかな…?』
―――ズザザザザー
「「うおーお!!!」」
ハンバーグやピクルスの攻撃を、見事に回避するゾロとサンジに会場から感嘆の声が上がる。
同時に、
「舞姫ちゃんは宙に逃げてるだけか?」
「何もしねぇな…」
「出来ねぇんじゃねぇのか?」
『………』
好き勝手な言い様に、青筋を浮かべながらも宙を蹴ると真っ直ぐにビッグパンへと降下を始める。
「おおーっと!!舞姫ちゃんもやはりボールマン狙いかァ!?」
騒ぐ実況に舌打ちをしながらも、ビッグパンの腹部を思いっきり蹴り飛ばす。まるでその怒りを表すかのように。
「…がはっ」
あまりの衝撃に巨大な体がくの字に曲がる。足は地面から離れ今にも倒れそうだ。
『倒れられたら…めんどくさいかも』
「任せてハルちゃん!」
いつの間にかビッグパンの後ろに回っているサンジ。倒れ込む背を蹴りあげられ、彼は倒れることすら出来ない。
ハルは地に足をつけるとビッグパンを背に地を蹴る。そこでゾロとすれ違うが、二人の間には何の合図もない。
「く…そ」
「…よくも」
ハルが向かう先には気絶していたハンバーグとピクルスが武器を取りだし、ゾロを襲わんとしていた。
反則だと訴えるウソップだが、審判が"偶然"ストレッチをしていて現場を見ていないため、セーフだと判定される。
『あんたらのチームインチキばっか…』
サンジがゾロを宙へと蹴りあげると、ゾロはビッグパンの口を掴み勢いのままその巨体を浮かせる。
『最・低!』
「「…ぶっ!?」」
勢いよく蹴り飛ばされたピクルスは審判へ、ハンバーグはフォクシーへと突っ込む。
同時にビッグパンの頭がリングへぶちこまれ、辺りを歓声が支配した。
意外と単純な君
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