05
「おまえイノセンスってやつ使わねぇのか?」
ゾロの何気ない問いに空色の瞳はぐっと細められる。
『使うなって言ったのゾロじゃん…』
「な…、なんだよ」
『べっつにー』
ハルの呟きは届かず、むっとしたことには気づいたゾロが驚き狼狽えた。
「ワイパー!!」
「ラキ!?」
荊の外から聞こえる声。ジャイアントジャックから走ってくるのはシャンディア唯一の女戦士ラキ。この戦いからはすでに離脱して、いるはずのないラキに驚くワイパーだが、ラキは構わずカマキリの言葉を伝えようとする。
「おい、ラキ!」
「エネルは昔から人々が神だと畏れた雷そのもの…」
「ラキ!ここから離れろ!!」
「敵うわけないんだ…っ」
「おい!やめろォ!!」
「………ワイパー?」
血相を変えて叫ぶワイパーを不思議に思ったラキが言葉を止めるが、背後から聞こえるいびつな音に動きさえも止めた。
「私を呼んだか?」
ゆっくりと振り向くそこに立っていたのはエネル本人。ラキは言葉を失い目の前の彼を見上げることしか出来ない。
「よせ、エネル!やめてくれ!!」
荊に手をかけ訴えるワイパーは今までになく余裕がない。
「そいつは戦いを放棄したんだ!…ラキ!!」
『………』
必死に訴えるワイパーを黙ったまま眺めるハル。
「バカめ!他人など気にして生き残れると思うなァ」
神兵のひとりがラキしか見えてないワイパーのもとへ飛んでいく。
「ワイパー!討ち取ったり!」
衝撃貝をつけた手をワイパーの背に向け何度か攻撃するが、ワイパーは何も言わずただ静かに口元から血を流す。
「……逃げて」
その言葉を最後にラキは倒れた。エネルの攻撃によって。
「ヤハハハ…思ったより甘いじゃないか、シャンディアの戦士ワイパー。女とて戦士。挑んでくる子羊を私は差別しない。そこの娘のようにな…」
ちらっとハルを見やるエネルだがハルはエネルを見ようともしない。
「まあ、せいぜい死なぬことだ……ヤハハハ」
一瞬にして消えるエネル。呆然と立ち尽くすワイパー。
「あれが…神!?」
ゾロの言葉にハルは地を蹴り神兵を倒しにかかった。
『(早くナミを…)』
あくまでもナミ優先だが大蛇を倒そうとするのも邪魔する神兵を先にと飛び出す。
「ここを出る前にやらなきゃいけねぇことがある…」
刀を手にしたゾロも勢いよく飛び出した。
「「大蛇(うわばみ)!!」」
同時に飛び出したワイパーはゾロにまでも攻撃を仕掛けてくる。二人を邪魔する神兵はハルが援護するかのように倒していく。
『邪魔すんな、羊!』
「ヤギだ!!」
何とか抗議するも蹴り飛ばされた神兵は荊に背を打ちあっという間に動かなくなった。
「残りは5人と2匹…」
荊の中のデスマッチ
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