04
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「お帰りなさーい、アレン君v何にする?」
ジェリーさんに一通りの食事を注文する。
隣を見れば、多くの人に体を縮こまらせるハルの姿。何か注文するかと訊けば、小さく首を振った。
状態を知っているジェリーさんはぎこちなく微笑んだあと、厨房の奥へ向かう。
「本当に何もいらなかったんですか?」
『……はい。』
一度だけうなずくも、忙しなく辺りをきょろきょろと見回していた。
知らない人ばかりで落ち着かないのか、体はかたかたと小さく震えている。
ここに連れて来たことが間違いだったな…、なんて考えるももう遅い。注文する前に気づくべきだったから。
「…すみません。貴女のこと考えてなくて…。」
『………え…。』
「…知らない場所で知らない人たちばかりの場所を、貴女が怖れないはずないですよね。」
縮こまる彼女を見下ろせば、桃色の綺麗な瞳をまるくして僕を見上げる。
それはとても不思議そうで、僕は思わず首をかしげた。
「…どうしました?」
『どうして…どうしてみなさんは…私のこと……そんなに知ってるんですか…?』
「……っ…」
思わず口をつぐむ。
『私が人見知りなの…見た目でもわかっちゃうんでしょうか…?』
情けなさそうに眉をさげるハルに何と言っていいかもわからない。
いっそこのまま言ってしまいたい。
貴女は記憶をなくしているだけ。
僕らは貴女の家族だ、と。
埋まらない、埋めれない