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「絶対に俺から離れるな。」


そう言ったきり何も話すことなく黙々と歩き続ける神田さん。人混みのなかを軽々と進んでいってしまう。私といえば…



『……わっ…、すみま…せんっ』

身長が小さいことは十分承知してるけど、この町の人たちは本当に私が見えてないのか、何度も肩や胸にぶつかってしまいなかなか進めない。


『……………あれ…』




そうこうしているうちに神田さんが視界からいなくなってしまった。人が行き交うなか私はぽつりとその場に立ち尽くす。


『神田さん…?』



もともと一人で行くはずだったため、神田さんがいなくても出来る。けど本当のことをいうと、神田さんが着いてきてくれてほっとしていた。




知らない町に一人で行くのはまだ少し抵抗があったから。


けどその安心感が逆に今の心境を悪化させていた。さっきまでの安心感が嘘のように、今不安でいっぱいになる。



『……どうしよう…』


地図を開き場所を確認しようとするがそれすらもわからない。人混みのなかでは動きにくいと思い、人波に逆らって道の端まで出る。


誰かに現在地を聞こうと声をかけようとするが、みんな早足で目の前を通りすぎていった。

視線を感じて路地を覗くと、にやにやと笑いながら私を見る男の人が二人。他のみんなと比べて暇そうにしているけど、極力男の人には話しかけないようにしなきゃ。


コムイさんとリーバーさんにキツく言われたもん。



彼らから目をそらし地図に目を落とす。神田さんはどこまで行っちゃったんだろう。私がいなくなったことにも気づいてないのかな。






―――ガサッ


唐突に地図が奪われ肩にはガシッと誰かの腕が回る。『……あ』と漏れる声に頭上からゲラゲラと笑い声が聞こえた。

……一瞬神田さんかと期待した。



「お嬢ちゃん、どこに行きたいのォ?」

『……だ、だい…じょ、ぶです!』

「どもっちゃって可愛いねぇv」


どうやら先ほどの路地にいた二人組らしく、肩に手を回している人と地図を取った人は別人のようだ。



『か…返して!』

「心配しないでも連れていってあげるよ」「俺たちから離れちゃだめだよォ?」

『……っ…』




<絶対に俺から離れるな>





『(離れるなって…、置いていったのは神田さんじゃないですか…)…っ』


抵抗するも私の体はひょいと抱えられ路地へと連れていかれる。道行く人たちはみんな知らないふり。




……あぁ、見て見ぬふりをされると思い出す。まだ拭いきれてないんだ…。





「大人しくなったな?」

「もうここでヤッちまおうぜェ」


いつの間にか人混みは見えなくなり、辺りはじめっとした空気に包まれている。カタカタと震える体、声を出そうにも声の出し方を忘れてしまった。



―――ドサッ


『……っ…』

「段ボールの上なら痛くないだろ?」

「今回は俺からなァ」


一人の男性がぎゅっと縮こまった私の腕を頭上で掴む。足で抵抗しようとしても目の前の帽子をかぶった男性に難なく抑えられてしまった。



『……や、ぁ…』

「へへへ……可愛い声で鳴けよ?」

『……っ…!!』


首もとに顔を埋められゾクッと体をひねる。そうこうしているうちに服の裾からするっと冷たい手が入ってきた。










 


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